夫婦ボートレーサー泣き笑い 力良&裕子の交換日記

【黄金井力良の巻】皆さんは「水神祭」って知っていますか? 初1着、初優勝など、節目の勝利やおめでたいときに行われるボートレース界の儀式です。「水神祭」というカッコいい名前を聞くと、牧師のような格好の水神様が現れて祭りをあげる、みたいな仰々しい儀式をイメージするかもしれませんが、単純に選手仲間に担がれて水面にドボン!と落とされるだけ。仲間内のお祝いなんです。

 デビューして初1着を取ると、救助艇に乗ってお客さんがいるスタンドの前まで行って大々的に行われることがありますが、GⅠ初1着、SG初1着、初優勝のときなどは、ピット内で仲のいい選手同士でやるのが一般的です。なので、デビューした新人はまず1着を取って水神祭をあげることが目標になります。

 同期の間では「○○がもう水神祭をあげた」「まだ水神祭をしてないのは○人」という会話がよく飛び交っていますね。

 僕はデビュー3節目の多摩川で初1着を取りました。しかし、その直前節の桐生ではすべてのレースで最下位(6着)でした。その時点で同期(100期)は何人も水神祭を済ませていたので、かなり焦っていましたね。桐生(群馬)から車で帰る途中、落ち込み過ぎて真っすぐに家に帰れず、一人でファミレスに立ち寄りました。レースリプレーを見ながらヘコんでいたのを今でもハッキリ覚えています。

 そして、次の多摩川の初日1走目で初1着! 初めての水神祭は本当にうれしくて、ホッとしましたね。

 2度目の水神祭は2012年の徳山「新鋭王座決定戦」でGⅠ初1着を取ったとき。同県(埼玉)の後輩に担がれ、ボートを上げ下ろしする昇降機から水面に投げ込まれました。投げる位置(高さ)は担いだ人たちが調整するのですが、さすがは埼玉支部のやさしい後輩! 相当高い位置から投げてくれて…。うれしさよりも恐怖心の方が強かったですね(汗)。実はその時、時間に余裕がなくて同期に声をかけずに行ったんです。それを知った同期たちは「何で声をかけてくれなかったの?」と言い、その日の夜に宿舎の風呂で全裸で担がれ、きっちり湯船に投げられました。水神祭ならぬ“湯神祭”でした。

 そういえば、同期の和田兼輔が平和島で初優勝したときは一緒に水面に飛び込みました。冬だったのでとにかく寒かったのを覚えています。担いで投げるとき、水が冷たい冬は場所取りが重要。最前列は一番危ないのでみんな避ける。そこでの上下関係は厳しいですよ(笑い)。時期を選んでできませんが、やっぱり水神祭は夏の方がいいですね。

 僕はまだ優勝したことがないので、今は初優勝の水神祭をしてもらうのが目標。できれば寒くなる前に達成できるように頑張ります!

☆こがねい・りきら=1986年3月4日生まれ。埼玉支部の100期。2007年5月の戸田でデビュー。10年4月の江戸川で初優出。優勝は未経験。15年後期は勝率5・38(A2級)。14年の獲得賞金額1660万2000円。身長173センチ。血液型=A。

<次回は妻・中西裕子が執筆=9月3日掲載>