【ボートレース大村SG「第42回ボートレースオールスター」:カウントダウンコラム(3)】SG「ボートレースオールスター」において、今回で実に30回目の出場を数える選手がいる。“ミスターボートレース”こと今村豊(山口)がその人だ。よわい53歳を迎えた現在でもGI、SGロードで常に優勝候補に挙がってくる“超”強豪だ。恒例のSG直前企画「スターオブスターズ」の3回目はこの男にスポットを当てた。

 5月7日、ボートレース界、いや公営競技界に衝撃が走った――。73歳で現役最年長選手だった“レジェンド”加藤峻二(埼玉・5期)が突然、引退したのだ。

 さらにこのニュースに際して、驚かされたエピソードがあった。というのもボートレース下関に出走中だった今村がこの報を聞いて“号泣”したというのだ。

“ミスターボートレース”と呼ばれる男が「ずっと目標にしていた。憧れだった」存在が引退したという現実がどれほど今村にとってショックだったかを物語っている。

 今村本人も来月22日には54歳を迎える身で、自身が“レジェンド”を継承する立場となって、もはや「目標は正直ない。全レース、一走一走を大事に走るだけ」と現在のレースに対する思いを口にしている。

 やや湿っぽい流れになったが、とにもかくにもこの男はすごい、“偉大”な選手だ。何せこのSG「オールスター」には1982年の第9回大会(住之江)で初出場を果たして以来、これが実に30回目の出場となる。しかも優勝戦進出は10回を数え、V1、準優勝は5回もあり、今年もファン投票第4位での選出だ。

「この年齢でよくやっているな、ってことでしょう。ありがたいです。若いころはプリンスで、その年齢じゃなくなったのでレジェンドだけど、いい選手じゃないとそうはならないので、そう呼んでもらえるだけでありがたい。褒め言葉だと思う」

 SG優勝こそ2010年の蒲郡SG「メモリアル」以来、5年間遠ざかっているが、昨年末の艇界頂上決戦・SG「グランプリ」にもランキング8位で出場(トライアル1st敗退)。この4月にはプレミアムGI児島「マスターズチャンピオン」を8戦全勝で完全優勝。自身初の児島での優勝劇に花を添えた。

 今大会の舞台となる大村水面には「(記念も勝ってるし)相性は悪くない。ただ低出力機だし、いいエンジンを引きたいってのはある。高いレベルの戦いだとごまかせない部分もあるから」とすでに攻略のイメージを思い描いているようだ。

 昨年の福岡大会では優勝戦の1号艇に勝ち上がりながら、最後の詰めを誤り、準優勝に甘んじただけに今回は絶好のリベンジの機会。“真のスーパースター”が新たな伝説を作り上げる。

☆いまむら・ゆたか=1961年6月22日生まれ。81年5月の徳山でデビューすると、その第1走で初勝利、余勢を駆っていきなり初出場で初優出を果たしたスーパールーキー。その後は82年のまるがめ30周年記念でGI初優出初優勝。SGでは84年の浜名湖第11回オールスターで初V。トータルGI47回、SGは7回の優勝。一般戦を含む通算Vは131回。1着数は2600回を超え、“艇界のレジェンド”や“ミスターボートレース”と称されている。血液型=A。

※次回は大村水面・エンジン&オールスター出場選手データ特集