ボート界のレジェンド 語り継ぎたい思い出の名勝負

【山川美由紀(香川・57期)】(2012年、第26回レディースチャンピオン=若松)

 当コーナーに初の女子選手が登場。今回は女子の第一人者と言うべき山川美由紀(48=香川)。過去、レディースチャンピオンは史上最多タイとなる3度の優勝を始め、1999年の四国地区選制覇、2013年には女子選手としては史上初の2000勝を達成と、数々の金字塔を打ち立ててきた女傑が語る思い出のレースとは?

 この企画を当人に打診した時、てっきり99年の四国地区選を挙げるものとばかり思っていた。6コースからの差し切りで優勝した一戦。当時女子選手としては、42年ぶりとなる男女混合GI制覇であった。「もちろんうれしかったですよ。でも無我夢中で取ったようなもので、一番のレースではないですね」と意外な答えが…。

 そこで、挙げてもらったのが、12年の若松で行われた「第26回レディースチャンピオン」だ。この大会から、施行時期が夏場へ変更。同年3月に多摩川で行われた25回大会では、メーカー機と相棒を組みながらも、3日目の落水が響き予選落ちの憂き目に遭った。5か月後に行われたこの大会はその雪辱を果たす意味合いもあった。複勝率40%あるエンジンを引き、初日のドリーム戦を前にした本体整備が大当たり。足は日増しに上昇し節一に仕上げた。結局6戦4勝で予選をトップ通過して準優勝戦へ。しかし、“好事魔多し”。2号艇・香川素子の差しを許し、2着に敗れた。「回り足中心に足は良かったですね。それだけに準優で負けた時は、正直かなりヘコみました。でもお風呂から上がった直後には、(気持ちが)切り替えられたし、夜もぐっすり眠れました」と当時を振り返る。

 そして迎えた優勝戦。5号艇日高逸子の動きが注目されたが、枠なりの3対3のスタイル。4コースカドからコンマ09の快ショットを放つと、内側の艇を絞り切ってまくりを敢行。バックで抜け出すと、あとは後続を引き離す一方で、堂々の優勝を決めた。

「リラックスできていました。もし1号艇だったら、緊張していたでしょうね。それに女子王座は当時、1年置きに1号艇が勝ったり負けたりを繰り返していて、あの時は負ける番だったから(笑い)」と本人が話す通り、第16回大会からイン逃げと、それ以外の決着がきれいに1年置きに交互にやってきており、プラス思考に考えたことも良かった。

「取るつもりでシリーズに臨んだけど、45歳で本当に取れるか半信半疑でした。だから余計にうれしかったし、一番思い出に残るレースですね」

 そんな山川は今年からマスターズ世代。心境の変化もあったという。「三国(昨年のレディースチャンピオン)のけがで、クイーンズクライマックスが絶望になって、考え方が変わったんです。それまでは賞金とか(フライング)休みばかり考えていて、小さくなっていたんですよ。でもそれは気にせずに、目の前のレースをしっかり走ろうと思ったら、結果もついてきました。今後も、その気持ちで頑張ります!」

 ベテランの域に入っても、まったく衰えを見せないレースぶり。まだまだ進化は続いている。

☆やまかわ・みゆき=1966年10月24日生まれ。香川支部の57期生。85年11月の鳴門でデビュー。翌月の丸亀で初勝利。翌86年12月の丸亀で初優出、89年7月の三国女子リーグ戦で初優勝した。99年鳴門地区選でGI初制覇。また96年戸田、2001年多摩川、12年若松と、過去にレディースチャンピオンを3回制している。通算73V(GIは3V)。身長154センチ。血液型=A。