ボートレース住之江のSG「第36回グランプリ」(優勝賞金1億円)は19日最終日、12Rで優勝戦が行われた。

 レースは3コースから豪快にまくった瓜生正義(45=福岡)が通算11回目のSG制覇を2回目のグランプリVで飾ったが、1Mで転覆した峰竜太(36=佐賀=妨害)に3人が乗り上げ完走は2人。3連単(3連複)は不成立となりボートレース史上最多返還となった。また、11Rで行われたSG「グランプリシリーズ」(優勝賞金1700万円)優勝戦は新田雄史(36=三重)が3コースからのまくり差しで優勝した。

 水面上空にくっきりと浮かんでいた満月の影響ではないだろうが、スタート展示で前づけに動いた白井英治(45=山口)が転覆しそうになるほどの闘志がプールに充満していた。本番の1Mにも優勝を狙う6人の熱い思いが交錯。瓜生のまくりにインから応戦した峰の舳先が、わずかにターンマークと接触。転覆した峰が外艇の差しコースをふさぐ形になり、丸野一樹(30=滋賀)が、平本真之(37=愛知)が毒島誠(37=群馬)が、次々に乗り上げた。最高のスピードで引き波を越えなければ優勝はないだけに、ブレーキは間に合わなかった。

 事故レースにはなったが、瓜生のまくりは完璧だった。現役最強の峰を一瞬にして引き波に沈めた切れ味! 瓜生がまとうカポックは蒼いオーラに包まれていた。

「いや~、信じられない。まだ実感はない。事故レースになったので複雑です」

 レース直後は瓜生らしく、状況を考慮して控えめに振る舞ったが、勝利への準備は着々と整えていたという。

「優勝戦は一番いい状態でいけた。ただ、スタートは3カ所から練習して、どこからいっても分からなかったので一つでも内からいこうと…。3コースを取れたのも勝因の一つです。スタートは放ったけど、1Mはまくれたかな、と思いました」

 スタートの不安を補って余りある経験とテクニックが栄冠をもたらした。

「今年は師匠(古賀武日児さん=引退=登録番号2021)の登録番号の年なので、トロフィーか何かを渡したい。それに勝てたのは支えてくれた家族のおかげ。今日のことは心の隅に置いて、また一から頑張ります」

 ベテランになり味わいを増したヒーローは、来年も随所に存在感を示してくれるだろう。