◇北中元樹(42)滋賀支部82期

 ベテランの域に入ってくると、水神祭を行うような〝節目〟も少なくなってくるのが一般的だが、今年に入って3つ〝節目〟を迎えた。4月に尼崎で10年半ぶりのV、7月に地元びわこMB大賞でGⅠⅠ以上の初優出、そして9月桐生での通算1000勝だ。

 この中で最もうれしかったというのが久々Vだという。「段違いですよ。初Vの時のようでしたね。前回が10年前だったし、子供に見せたいと思っていました。ビデオをみて喜んでくれました」。前回Vは2人の愛娘、愛息がまだ小さく物心がついていない時期だっただけに、あらためてカッコいい父親の姿を見せられたことは何物にも代えがたい喜びだった。

 好循環は勝率にも表れており、現在はA1、さらに2022年前期もA1キープが濃厚。2期連続のA1は08年後期、09年前期までさかのぼるが、42歳になってさらに進化が続いている。

 家族だけではなく、滋賀支部の仲間にも刺激を受けた。ひとりは同支部の先輩の吉川昭男だ。「一緒に飲んだりするけど、昭男さんの存在は大きいですよ」という。昨年3月の平和島クラシックで47歳にしてSG初優出、優勝戦も2着と好走したベテランの奮闘が励みとなっている。

 さらに「市川(健太、127期)の面倒を見ることになったんですよ。素質はあると思う。A1と初優勝を自分が現役の時に見てみたいですね」と、初めて取った弟子の成長を心待ちにしている。その市川は、北中に弟子入りを志願した理由について「デビュー節に一緒になり、その後も3節くらい一緒に走ったんですが、レースを見てもらったり、ペラも含めて教えてもらうのが心地いいんですよ、まず『いいと思うよ』から入って、そこからこうした方がいいって感じで、教え方がスッと入ってくるんです。北中さんの人格や雰囲気だと思います。本当に付いて良かったです」とべた褒めするほど、今日では少なくなった理想的な師弟関係を築いている。

 この10年間はVから遠ざかっただけでなく、B級だった時期も長かった。体重やメンタル面のコントロールにはかなり苦心したということだが、その苦労の多さが教え方のうまさにつながっているのだろう。

 今後の目標は「1000勝を通過点にすること。節目を多く迎えられたらって思いますね」。ひとつでも多く白星を積み重ね、家族に、そして弟子にまだまだカッコいい姿を見せたいところだ。

☆きたなか・げんき 1979年5月28日生まれ。滋賀支部所属の82期生。滋賀県出身。98年5月のびわこでデビューして、1走目に初勝利。初優勝は05年12月の福岡。通算7V。同期は赤岩善生、中沢和志、坪井康晴、菊池孝平、谷村一哉ら。