【とこなめSGダービー:カウントダウンコラム(3)】ついに、あの男が帰ってくる――。14日開幕するとこなめSG「第61回ボートレースダービー(全日本選手権)」でSG復帰を飾るのが新世代の旗手・篠崎元志(28=福岡)だ。昨年8月のまるがめSG「MB記念」優勝戦でフライングを犯し1年間のSG出場権(グランプリを除く)を剥奪された。苦悩の日々を糧に、いざ大舞台で復活する。

 悪夢となったMB記念の優勝戦。グランプリ出場はすでに当確しており、一発勝負の場面ではなかったが、風を読み間違えてコンマ02の勇み足。ぼうぜんと引き揚げてきた篠崎は言葉を発することができなかった。

 特別ルールで年末のグランプリは出場できたが、今年1月からはSG、GⅠの舞台から姿を消し、B級選手や新人選手に交じって一般戦を走り続けた。当初は「まだ気持ちの整理がつかない」と漏らし、その後も「あれがいい経験と思える日は来ないと思う」と後ろ向きに語っていたが、ある先輩レーサーの言葉が篠崎を救った。

「Fを切って目標を見失っていたら、深川真二さんが『どうせなら年間最多勝を狙うつもりでいけ!』って言ってくれた。あれで気持ちが晴れましたね。本当にやる気が湧いてきました」


 思い立ったが吉日。白星量産の目標を掲げ、どんなレースでも果敢に1着を取りに行った。そして現在、年間1着回数は96回(10日現在)で全1616選手中、第2位。自分に課した年間最多勝のノルマを、本当に実現しようとしている。

 有言実行はもう一つある。まるがめでのF直後の平和島SGダービーを棒に振った篠崎は本紙に対し「自分で失ったダービー。ドリームのひと枠も捨ててしまったので、来年はその枠をもぎ取ってダービーに戻ってきたい。這い上がってきます」と約束した。

 あれから丸1年、篠崎は自らの力でドリーム4号艇を勝ち取って公約を果たした。「ダービーに出ることなんて当たり前。ドリームに乗ることしか考えてなかったですよ」と胸を張った。
 だが、これでも満足していない。今年のグランプリ出場だってあきらめていないのだ。

「可能性がゼロじゃない限り、狙うのは当然です。厳しい状況ですが、ダービーで勝つしかないって気持ちです」

 賞金ランク34位からの大逆転18枠入り。理想論ではなく、篠崎は本気で狙っている。

☆しのざき・もとし=1986年2月28日生まれの28歳。福岡支部の96期生。2005年5月、若松でデビュー。07年4月の若松で初優勝。2度の右肩脱臼骨折を克服、11年10月のびわこ周年で初GⅠ制覇。同年SG3優出で賞金王決定戦に初出場。12年12月の住之江賞金王シリーズでSG初制覇。通算31V(GⅠ4V、SG1V)。弟は101期の篠崎仁志。血液型=A。