【からつGIマスターズチャンピオン】今村の美学の源は“世界の王さん”

2014年04月12日 11時00分

シリーズの大本命・今村豊

【からつGIマスターズチャンピオン:カウントダウンコラム(3)】直前連載の第3弾はシリーズの大本命・今村豊(52=山口)。今までにない窮地の中、迎えるシリーズとなった今回は、この男の生きざまに迫った。

 ボート界に一流選手は多く存在する。

 だがその中でスーパースターと呼べる選手は限られている。この言葉がピッタリ当てはまるのがこの男。実績もさることながらクリーンなレースと人徳がファンの心をつかんで離さない。

 今回も万全の状態で望めると思いきや、少し状況が違う。前期のF2により休み明けから出走回数が足りず勝率を持っていながらギリギリの戦いを強いられている。現状の心境をこう語る。「いつも通りにいけてる。ただSは分かってても気をつけてる。マスターズは走る回数が計算できるけど、一般戦だときつい。Fもできないし、一走一走が重要になってくる」と言いながらも笑顔を絶やさない。

 そこにはファンへの思いがある。

「少なからず、多からず買ってくれるファンがいる。僕を買ってくれるファンは僕が負けることで悔しい思いをする。やるからには常に1着を狙っている。負けて悔しくない選手なんていない。どんな状況でも一つでも着を狙って走り続ける。負けて悔しい気持ちがなくなったら自分が辞めるときだと思う」

 そんな今村の美学の源は元巨人のスーパースター王貞治氏だという。「王さんの話を昔聞いたことがある。どんなに忙しい状況でも絶対戻ってきてサイン一つひとつをファンに書いてたらしい。その話を聞いて一流じゃなく“世界の王さん”なんだなあと思った。だから誰もが認めてくれるし、器の差だと思う。どの世界にも成績のいい一流の選手はいる。ただ、レースをしなくても、あの人すごいと言われてこそ真の一流だと思う」

 真剣に語る表情はいつもは見せない一面だ。普段のピットでは自ら取材しやすい環境を整えている。「こっちが一歩引けばあっちは二歩引いてくれる。こっちが一歩前に出れば相手は二歩前にくる」。こんな懐の大きさこそが誰もが愛するボートレーサーの証しだ。シリーズの本命が厳しい状況をどう克服するか見届けようではないか。

☆いまむら・ゆたか=1961年6月22日生まれ。山口県在住。81年5月徳山一般戦でデビューし、その節に初勝利を挙げる。82年4月蒲郡で初Vを飾った。通算優勝回数126回、うちGⅠは45回、SGは7回。身長163センチ。同期(48期)には鵜飼菜穂子ら。血液型=A。