いよいよ2014年の賞金王ロードが本格的にスタート! 今年SG第1弾となるボートレース尼崎「第49回クラシック」が18日に開幕する。今回の直前企画ではグランプリ奪回を狙う4人の「元賞金王」をピックアップ。第1回はSG11Vを誇る絶対王者・松井繁(44=大阪)だ。

 今年2月の住之江・近畿地区選手権で史上2人目のGⅠ50Vを達成。生涯獲得賞金32億円は歴代1位。60年を超えるボート史の記録を次々に塗り替え、名実ともに艇界のトップに君臨する。

 そんな松井に「目標」を聞くのは愚問だ。

「いつも言ってるんやけど、目標は賞金王に出続けること。それだけや」
 何度この言葉を吐いたことだろう。「楽しいことなど何一つない」という努力は、すべて年末のグランプリに出るため。95年の初出場から昨年まで、05年を除くすべての年で出場し、史上最多タイの3Vを記録している。

「賞金王に出ないと賞金王を取ることができない。だから出続けて、そのチャンスをじっと待っているんや」

 目先の1勝ではなく、長い一年を見据えて勝負どころを逆算する。この緻密な計算と地道な努力、それを継続する「忍耐力」は艇界ナンバーワン。長らく「王者」と言われているゆえんだ。

「ボクがやってることをマネできる人はいない」と言い切る孤高の王者に、共感できる人物を聞いた。

「やっぱりイチローくらいちゃう? それ以外の人には感動するような言葉を頂いたことはないしなあ。イチローがあれだけやってるのを見ると、ボクと同じような考え方、気持ちで取り組んでるんやないかなって思う」

 準備とルーティン、忍耐と継続。努力の仕方はウリ二つとはいえ、かたや世界でトップを取った男。普通の人なら気後れするところだが「別の競技やし、向こうは世界やけど、気持ち的に負けてるつもりはないよ」と一歩も引かない。

 イチロー同様、王者も肉体的な「衰え」が指摘されやすい年齢になってきた。

 自らの引き際についてはこう漏らす。「引退(の時期)は若いときからずっと考えてるよ。ボクは『賞金王を取れない』と感じたら辞める。実際に取るかどうかではなく『もう取れない』と思ったときにね」

 人知れぬ「覚悟」を胸に、前人未到のグランプリ4Vを見据える。その大偉業への道は尼崎クラシックから始まる。 


☆まつい・しげる=1969年11月11日生まれ。大阪支部の64期生。89年5月の住之江でデビュー。90年8月の芦屋で初優勝。GⅠは92年5月(戸田)の初V以来、史上2人の優勝50回。SG初Vは96年5月の笹川賞(児島)。史上最多タイの賞金王制覇3回(99、2006、09年)を含むSG11Vは歴代2位。11年12月の賞金王決定戦(2着)で公営競技史上初の生涯獲得賞金30億円を突破。キャッチフレーズは「絶対王者」。通算112V。身長168センチ。血液型=O。