際どいスタートの時、子供の顔が浮かぶ

2012年06月06日 12時00分

【担当記者が本音で語る ボートレース西・東】

 ボートレーサーの平均年収は約1700万円。B級選手でも場合によっては一流企業の重役クラス、SGに出るA級レーサーなら3000万円は下らない。このご時世、サラリーマンにとっては夢の数字である。

 いきなり「カネ」の話で恐縮だが、ボート選手には幾度となく「お金に苦労したことないでしょ?」と突っ込んだことがある。返ってくる答えは千差万別。「いい職業を見つけましたね。絶対に辞めたくない」「確かに選手になってファミレスに行ったことはない」とぶっちゃけてくれる選手もいたが、大半は「いやいや、そんなことないですよ」と首を振る。

 じっくり話を聞くと「生涯安泰」などと考えている選手はほとんどいない。

 先日、新鋭リーグ戦である若手A選手がこんなことを言っていた。

「最近は際どいスタートの時、ふと子供の顔が浮かぶんですよ。つい体が反応してレバーを放ってしまうんです」

 発展途上の20代。持ち前のスタート力を武器に〝1000万円レーサー〟になったA選手は、1年前に第1子を授かると成績に変化が生じた。スタートタイミングが徐々に遅くなっていったのだ。

 ボートレーサーにとってフライングは付き物。スリットラインを0・01秒でも早く通過すれば、出場停止30日の罰則が待っている。1期間に2回のFを切るとさらに60日追加だ。一家を支える立場になったA選手は、新たに生命保険にも加入。収入面を考えると、できるだけフライング休みはできない。

「自分が30日間も〝無職〟で家にいると精神的につらい。確かに稼ぎはいいけど、僕らは常にケガと隣り合わせ。今後のことを考えると本当に不安ですよ」
 こう悩むA選手、オフはベビーカーを押し、オムツを交換する日々だ。

 関東の中堅B選手もある時期を境に急激にスタートが遅くなった。その理由は「実は住宅ローンを組んだんですよ」。やはり、休んではいられない現実があった。

 楽に稼げる商売などない。経済的に「勝ち組」と言われるボートレーサーもしかり。水面で華やかなレースを展開する裏では、世のサラリーマンと同じ苦労を抱えて生きているのだ。