女子オートレーサー初のSGウイナー誕生なるか――。業界内で期待を集めているサトマヤこと佐藤摩弥(29)が埼玉・川口オートレース場で26日に開幕するSG「第41回オールスターオートレース」に満を持して参戦する。その決戦を前に偉業達成への野望とともにレース中の事故で重傷を負い長期療養中の先輩・森且行(48)と交わした固い“契り”を激白した。

 22日、愛知県名古屋市の名古屋競輪場で行われた競輪とオートレースの売り上げを財源としているJKAの補助事業の2022年度交付決定式に出席したサトマヤ。その後、本紙の取材に「私がSGを勝ったら森さんがボウズになる約束をしてるんですけど…。やっぱり見逃してあげようかな」と含み笑いを浮かべながら、ちゃめっ気タップリに打ち明けた。

 森とサトマヤは互いにオートレース界の顔として性別、年齢を超えた盟友と認め合う間柄でもある。どちらが先にSGを取るか競っていた中、20年11月の日本選手権で森が先んじた。

 森が勝ったらサトマヤがボウズ。その逆もしかり。デビュー前の養成所時代のスタイルに戻る約束を互いに交わしていたという。ただ「森さんにはあの時、見逃していただいたので、私が勝ったら今度は見逃そうかなと思ってます」とその心も次第に揺れ動いている。

 退院後に森と会った際には「入院先では髪の毛は要らないからボウズにしたいって言ってましたけどね。森さんは飲みに行くのがすごく好きなんだけど、今はそれでもできないし、ストレスもたまってるんじゃないですかね」と気遣う一面も見せている。

 デビュー11年目を迎えるサトマヤは最高峰の舞台であるSGでこれまで5回優出。オールスターでは2年連続優出と実績を残しており、頂点に立つ日も現実味を帯びてきている。

 SGVへの思いをさらに強くする出来事もあった。3月にボートレース大村で行われたSGクラシックで遠藤エミ(34)が女子レーサーとしては初となるSG制覇を成し遂げた。ボートレース70年の歴史の扉をこじ開ける快挙だ。大のボートレースファンであるサトマヤも涙をためながら、その瞬間をモニターで目撃した。「歴史的な瞬間を見ることができてすごくうれしかったし、感動しました」。種目は違えども公営競技をなりわいとする女子選手の偉業達成はこれ以上ない勇気と活力を引き寄せた。

「遠藤さんが優勝した後から、ファンの方や知り合いから『次はサトマヤだね』と言っていただけるのは、すごくありがたいと同時にプレッシャーも感じるけど、チャンスがある限り頑張るだけです!」

 初夏の陽気となることが多いオールスターでサトマヤが好走歴が多いのには明確な理由がある。走路温度が上昇し始めるこの時期は先行車が圧倒的に優勢。オート界屈指の速攻派であるサトマヤにとって「暖かくなってくるのは自分に有利」と自然現象の後押しを毎年実感している。

 SG初制覇後の公約――。あくまでも仮定の話で、これだけ楽しそうに語れるのも気心知れた森とサトマヤだからこそ。森がSG制覇を果たした時には自ら「奇跡が起きた」と語っていたが、ゴールデンウイーク中に再び奇跡が巻き起こる可能性は十分にある。

 そして、その時の森の決断は…。