菊あえて回避したフェノー陣営に勝機

2012年10月24日 16時00分

<天皇賞・秋:フェノーメノの挑戦(1)>NHKマイルCの覇者カレンブラックヒルの無傷のV6の可能性は? トーセンジョーダン、ルーラーシップといった古豪勢の仕上がりは? 多方面から充実のメンバーが集結したGⅠ天皇賞・秋(28日=東京芝2000メートル)はまさに見どころ満載。中でも本紙が注目したのはカレンブラックヒルと同世代の日本ダービー2着馬フェノーメノだ。秋初戦のGⅡセントライト記念を快勝しながら、最後の1冠・菊花賞には向かわず、秋天挑戦を選択した理由、そして勝算は!? 96年バブルガムフェロー、02年シンボリクリスエスの背中を追いかける若きチャレンジャーの1週間を連載で追う――。

 今年ほど天皇賞(秋)で3歳馬が注目を集めた年はかつてなかろう。史上初の無敗の盾制覇を狙うカレンブラックヒル、前哨戦のGⅡ毎日王冠でこれにクビ差に迫った2着ジャスタウェイ、そしてダービー2着(ハナ差)のウップン晴らしを同じ東京で誓うフェノーメノ。鮮度だけではない。“三銃士”の参戦は、歴戦の古馬さえかすませる強烈な存在感を醸し出す。

 その中にあっても異彩を放つのは、何ら“距離の壁”を感じさせないフェノーメノの挑戦だ。デビューから7戦すべて2000メートル以上の距離に出走。菊花賞に駒を進めていても、ゴールドシップと人気を二分する実績、地力は十分に有していた。実際、菊花賞でゴールドシップに続く2着はセントライト記念でフェノーメノが一蹴したスカイディグニティだったのだから…。

 なぜ淀3000メートルではなく、府中2000メートルでなければならなかったのか? 実は悲喜こもごもの歴史的経緯がそこに潜んでいる。

 時は06年菊花賞にさかのぼる。制したのは8番人気ソングオブウインド。最速上がり33秒5を駆使してのレコードV(3分02秒7)は、生産牧場の追分ファームに悲願のクラシック制覇をもたらす劇的な快走だった。ところが…。続いて果敢に海外に渡ったGⅠ香港ヴァーズ(芝2400メートル)は4着。しかもレース後には右前浅屈腱炎が判明し、古馬戦線での一層の飛躍を待たずして引退を余儀なくされたのだ。

 菊制覇の大き過ぎた代償――。追分ファーム生産馬フェノーメノを管理する戸田調教師は、そんな牧場サイドの無念を代弁する。

「目に見えない疲労が当時、脚元に残っていたのかもしれない。それほど菊花賞は過酷なレースになる可能性がある。この馬も将来的にそうなってもらっては困るんだ」

 確かに近年、菊花賞馬の“その後”は冴えない。07年アサクサキングス、08年オウケンブルースリ、09年スリーロールス、10年ビッグウィーク…。いずれも菊制覇がキャリアハイ。古馬になって飛躍を遂げてはいない。目先のGⅠでなく、将来性を選択したとも言えようか。

 とはいえ、菊回避は単にネガティブな理由からだけでは決してない。秋初戦のセントライト記念。実はその走りに、盾制覇の少なからぬ可能性を陣営は嗅ぎ取っていた。

 

連載2:成長曲線もクリスエスと同じ