【ルイジアナ州ニューオーリンズ10日(日本時間11日)発】“黒いロックスター”の誕生だ。WWEのスマックダウン(SD)大会が開催され、“ロックスター”中邑真輔(38)がメインをブチ壊す無法行為を働いた。WWE世界王者AJスタイルズ(40)と復活したダニエル・ブライアン(36)の試合に乱入すると、2人をキンシャサ・ニー・ストライク(ボマイェ)でKO。AJには急所攻撃連打を浴びせて、8日(同9日)の祭典「レッスルマニア34」に続き大ブーイングを浴びた。中邑の本心とは――。

 中邑は祭典の王座戦で敗退した後、急所攻撃からのキンシャサ弾でAJをKO。完全にヒールに変身して大舞台に爪痕を残し、その後の動向が注目されていた。

 衝撃の事件後、初となったこの日のSD大会では、新GMに就任した元ディーバ王者・ペイジ(25)の決定により、AJとブライアンのシングル戦が緊急決定した。

 WWE王者と復活した「イエス!男」の一騎打ちは激闘となり、ブライアンがイエスロックを決めれば、AJもカーフ・クラッシャーで返す。名勝負の予感も漂い始めた矢先、中邑がはやてのように乱入。まずはブライアンの後頭部へキンシャサ弾を放ち、戦闘不能に追い込む。“黒いロックスター”と化した中邑は、すぐさまAJに金的、キンシャサ弾、金的の「3連続キン攻撃」を浴びせてKO。これで立てる男は世界中のどこにもいない。中邑は狂気すら含んだ不敵な笑みを浮かべてリングを後にする。会場からは「ユー・サック!(最低野郎!)」の罵声が鳴り響いた。

 伏線はあった。この日の生中継中、控室でルネ・ヤング女史(32)のインタビューを受けた中邑は、ドリームマッチをブチ壊した責任について問われると「感情的になってしまった。申し訳ないと思っている…」と神妙に語った。しかし明らかにその表情は、新日本プロレス時代の「うっそ~!」という得意文句をのみ込んでいた。ルネ女史が「本当の気持ちを教えて!」と食い下がっても「英語、分からないんだ」と吐き捨てるのみ。ふてぶてしく去って行く背中は、悪意に満ちあふれていた。

 常に新たな刺激と挑戦を求め続けるエンターテイナー・中邑は、固定観念や停滞を誰よりも嫌っていた。自分の哲学を貫くためには、変身もブーイングもいとわない。来週のロウ、SD大会では、2日連続で選手の大量入れ替え「スーパースターズ・シェイクアップ」が行われる。全員SDに残留ならば、AJ、ブライアンとのトライアングル抗争も視野に入る。真骨頂ともいえる大舞台でのスタイルチェンジを経て、中邑がWWEの頂点に向かって再び疾走を始めた。