【コネティカット州アンカスビル26日(日本時間27日)】WWEのスマックダウン(SD)大会が開催され、人気者コフィ・キングストン(33)が祭典「レッスルマニア35」(4月7日、ニュージャージー州イーストラザフォード)でWWE王者ダニエル・ブライアン(37)に挑戦することがようやく正式決定した。

 冒頭ではニュー・デイ(ND=コフィ、ビッグE、エグザビア・ウッズ)がまたもやビンス・マクマホン会長(73)に全員で直訴。3人で頭を下げて「会長、挑戦ごっちゃんです」と懇願した。しかし執拗かつ陰湿にコフィいじめを続けるビンス会長が素直に首を縦に振るはずもない。先週大会ではガントレット戦を命じながら、実に52分40秒の激闘を制して堂々挑戦権を得たコフィに「エクストラマッチ」としてブライアン戦を追加。力尽きて敗れたコフィから強引に挑戦権を奪った。

 ビンス会長は「私の中で彼は『Bプラス』の選手にすぎない。ならばお前らの力でコフィを挑戦させたらどうだ?」と語り、何と今週はビッグE(33)とエグゼビア・ウッズ(32)に5チームとのガントレット戦を命じて、NDが勝てばコフィの挑戦を認めると断言した。

 これで張り切らないお祭り男たちではない。ビッグEはパンパンに張り詰めた肉体を躍動させて、必殺のアップアップダウンタウン(合体式顔面砕き)でカール・アンダーソン(39)、ルーク・ギャローズ(35)組、中邑真輔(39)、ルセフ(33)組を連破。続くザ・バー(シェイマス&セザーロ)はウッズが巧みに丸め込んだ。

 バックステージのVTR前には、コフィ、カリスマのベッキー・リンチ(32)らを筆頭に、ビンス派以外の選手が大声援を送る。残るはあと2チーム。ここで登場したSDタッグ王者組のウーソズ(ジミー&ジェイ)が実に泣かせる男気を見せた。

 2人は「俺たちは実力でチャンスをものにしたコフィが、挑戦すべきだと思う。ニューデイ、俺たちは、結束が固いお前らを尊敬するよ。今日は俺たちの負けだ。祭典での幸運を祈る」と話し、何と試合放棄でNDに勝利を譲渡したのだ。

 この光景を控室で見ていた王者ブライアンは大荒れ。イスを部屋中に投げ散らかした。明らかに流れがNDに傾いている状況で、ローワン(37)を引き連れて最後の相手としてリングインした。さすがに疲労の色濃いNDだが、盟友のために最後の力を振り絞る。まずウッズがミサイル弾を王者の後頭部に決めて動きを鈍らせると、ビッグEはニープラスをキャッチしてそのままマットに叩きつけ、リング下に排除した。

 さらには場外で孤立したローワンに、ウッズにトペスイシーダを見舞う。ここでビッグEが頭脳的プレーを見せた。実況席を引っくり返しローワンを下敷きにしたのだ。これでは身動きがとれない。場外カウントが進み、NDがリングアウト勝ち。5チーム勝ち抜きを達成して、コフィが王座挑戦権を獲得した。

 すぐさまコフィがリングに飛び込んで、号泣しながら3人で熱い抱擁を交わす。ウーソズの試合放棄も含めて、SNSなどで誹謗中傷や陰口が後を絶たないすさんだ現代社会において、これ以上は考えられない感動的な友情劇だった。ND全員で得たコフィの祭典出陣に、ベッキーら約30選手とレフェリー陣までが飛び出してエプロンを叩いて祝福した。

 不服そうに愛車に乗り込んだビンス会長はインタビューアーに対し「…挑戦を認めよう」と渋々語った。祭典まであと12日、さすがに会長も謀略をめぐらせる気力もうせたに違いない。期せずしてNDは、半年後に迫ったラグビーW杯日本大会に先立ち「One For All、All For One」の精神を見せつけた格好だ。

 リング上のお祭り騒ぎは延々と続き、場内には「ニューデイ」と「コフィ」の大コールが交錯した。2週で5選手と5チームを撃破して事実上、SD最強チームとなったND。あとはコフィのWWE王座奪取の瞬間を待つだけとなった。

「レッスルマニア35」は日本時間4月8日、WWEネットワークでライブ配信(日本語実況付き)される。