女子プロレス「スターダム」の“アイコン”こと岩谷麻優(27)が、窮地に立たされた女子プロ界の今後を語った。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、スターダムは他団体に先駆けて興行を自粛。現在も再開のメドは立たず、業界ならではの問題も抱える中で、女子のエースは何を思うのか――。

 スターダムは2月22日の大阪大会から興行を中止にした。3月には8日に無観客大会、同24日に観客を入れての後楽園大会開催に踏み切ったものの、その後は再び興行を自粛している。岩谷はスターダム勢の現状について「道場が人数制限ありだけど、使えるようになったんです。同時に入れるのは2人までで、それも体温を測って、密にならないようにやっています。あとは動画の生配信で、お客様に存在を忘れられないようにしています」と説明する。

 自粛下でも、各選手が工夫を凝らしながらコンディション維持に努めているという。また個人的にも新たな試みを始めた。「最近通販で、結構いいピアノを買いました。毎日、“耳コピ”で弾いています。練習はもともと自重トレーニングを中心にしてたので、それを家でやってますけど、ピアノも脳トレになっている気がします」

 とはいえ、業界が待ち受ける状況は厳しい。女子では売店での対面形式によるグッズ販売やサイン会がビジネスモデルとして確立しており、各団体とも収益の多くを占める。ところが「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」の観点から、再開後はこの方式が維持できなくなると予想されるからだ。

 選手のモチベーションをも左右する問題で「試合をした後、お客さんと売店でコミュニケーションを取る、当たり前だったことが、今となっては考えられないことになってしまった」と語る。さらに「今は無観客で試合をして(動画配信サービス)『スターダムワールド』に流すことを考えているところです。お客さんの前で試合ができる日は全く想像ができない。もしその日が来ても、ソーシャルディスタンスを取っての売店はできないと思います」と苦難の時代到来を覚悟した。

 それでも悲観するばかりではない。「今は時の流れに身を任せて、状況に対応するしかない。オールスター戦も時代の流れに沿って、みんながやりたいと思うならやればいいと思う。私はできる範囲でファンと交流する道を模索していきたい。今できることを精一杯やらないと、やってきたことが無駄になってしまうから」と前を向く。

 そんな思いもあって取り組んでいるのが“アイコン2世”の育成だ。昨年、SNSを通じて募集し、多くの応募があった。すでに練習生として在籍しており「コロナが明けたら、その子がデビューできるようにマンツーマンで教えていきます」。昨年度の東京スポーツ新聞社制定「プロレス大賞」で女子プロ大賞を初受賞したエースは、業界最大のピンチを切り抜ける旗頭になれるか。