鬼門の夏を乗り越えられるか――。女子プロレス「スターダム」のワンダー・オブ・スターダム王者、紫雷イオ(28)が15日、今夏の偉業達成を誓った。昨年、一昨年と2年連続で夏には欠場に追い込まれており、まさに試練の季節を迎える。しかし今年は違う。23日の東京・後楽園ホール大会で同王座の最多防衛記録を「11」に更新し、海外に流出している団体の至宝=ワールド王座の奪還に動く決意だ。

 5日の新木場大会で同王座最多防衛記録となる「V10」を達成したイオは、記録更新をかけて23日後楽園大会に臨む。相手は「シンデレラ・トーナメント」覇者で、自身が率いるユニット「クイーンズ・クエスト」の後輩でもある渡辺桃(18)。「会場が凍りつく試合をしてもいい。これがタイトル戦だという厳しさを先輩として見せたい」と冷酷な口調で話した。

 実績とキャリア、年齢で比較すれば、明らかに格下の挑戦者。それでも慢心はない。理由も明白で「2年連続で夏を棒に振りましたからね」と静かに振り返った。

 2016年7月24日大阪大会ではトニー・ストーム(22)に敗れてSWA世界王座から陥落。直後に尾骨手術のため欠場した。また昨年6月21日後楽園大会では、最多防衛記録を「V14」まで更新したワールド王座を岩谷麻優(25)に奪われ、その直後から、首の負傷により欠場を余儀なくされた。

 2年連続で夏に「引きこもり生活」を送ったためチャームポイントだった日焼けの跡も消え、肌は真っ白に戻ったが、今年は違う。「あの時はダメージの蓄積で体が悲鳴を上げていたけど、自分の体は二の次、三の次でほかの選手のことや興行のことを考えていた。そうじゃなきゃ成り立たなかったから。だけどここ1年は選手層と環境が整ったので、自分のコンディションづくりに集中できた」と確信している。

 だからこそ「まず白(ワンダー王座)をしっかり防衛して、この夏には赤(ワールド王座)に挑戦します」と表明。ストームが保持するワールド王座を奪還し、昨年の岩谷以来、史上2人目の同時戴冠を狙う。「私の時代が終わる気がしない。絶頂期ですからね。最高の夏にします」と表情を引き締めると、初夏の到来を告げる「V11」戦に向けて集中力を高めていた。