女子プロレス「スターダム」は25日、都内で緊急会見を開き、22日の後楽園ホール大会で起きた世IV虎(よしこ=21)対安川惡斗(あくと=28)の“凄惨マッチ”についての声明を発表した。3日ぶりに公の場に姿を現した世IV虎は、重傷を負わせた安川に謝罪。関係者の処分も発表されたことで騒動は収束の方向に進んでいるが、安川の早期回復と同時に、大きな懸念が残されている。心身ともに衰弱している世IV虎に対するケアだ。

 会見では世IV虎を間に挟んでロッシー小川社長(57)と風香GM(30)が深々と頭を下げた。小川社長は「プロレスの範疇(はんちゅう)を逸脱した行為が起き、安川惡斗選手が重傷を負いました。ご迷惑とご心配をおかけしたことを深くおわびいたします」と謝罪。世IV虎に無期限出場停止と、ワールド・オブ・スターダム王座の剥奪処分を下したことを明らかにした。

 また、小川社長と風香GMは3か月間、30%の減給処分となった。黒のスーツ姿で会見に出席した世IV虎は「このたびは、ケガをさせてしまった安川惡斗選手、選手のみなさん、プロレス界のみなさん、本当に申し訳ありませんでした」と謝罪した。24日には入院中の安川を見舞い、握手を交わしながらお互いの非を認め合った。安川は「(プロレスを)諦めないでください」と声をかけたという。

 世IV虎はそれ以上は話せる状態ではなく、質問を受けることもなかった。また、入院中の安川は頬と鼻、左眼窩底の骨折を負い、両目の網膜しんとう症の診断が下された。再発防止策として、(1)拳での顔面への攻撃を禁止、(2)リングドクターを本部席に置く、(3)宝城カイリが選手会長を務める、の3点が決まった。安川の早期回復は最優先されるが、それと同様に重要な問題が世IV虎の“去就”だ。関係者によると、22日の試合後から食事はもちろん、睡眠もほとんど取れておらず大きく精神的なバランスを崩しているという。実際に会見中も視線はうつろで、会見後に自宅まで送迎される時ですら、ひと言も口をきけなかったようだ。

 小川社長が「心の静養もしないといけない」と話すように、現状では通常の日常生活を送ることすら困難な状態。リング上ではコワモテで知られる世IV虎だが、ナイーブな性格の持ち主でもある。特に昨年8月にワールド王者になってからは「いい試合ができない」と先輩選手に漏らし、悩んでいたという。

 一方で、常軌を逸した攻撃に走った今回のような「キレやすさ」は元来、世IV虎が持っていた性質であった可能性も捨てきれない。「何かしら(性格に)欠陥があったと思うし、心の疲労も取らないといけない。カウンセリングを受けさせようという意見が会議で出ている」(小川社長)と、専門医の診断を受けて指示を受ける方針だ。同社長は「まずは落ち着かせて、そこから考えること。今は辞める、辞めないを決めることではない」と話しており、平常の精神状態に戻すことが最優先だとしている。進退を決めるのはそれからでも遅くはないというわけだ。

 ミスター女子プロレス・神取忍や、センダイガールズの里村明衣子ら女子プロレス界の先輩たちからも「辞めさせてはいけない」との声が相次いでいる。選手としての進退だけで“一件落着”としては何の解決にもならないだけでなく、業界にとっても大きなマイナスとなる。今回の騒動をうやむやにしないためにも、団体側は全力を挙げて世IV虎のメンタルケアに取り組んでいくことになりそうだ。