ノアの潮崎豪(35)が11日、原点回帰の寺修行を敢行した。今年は低迷が続きプロレスラー人生の岐路に立たされたが、年内のラストチャンスをかけてシングルの祭典「グローバルリーグ戦2017」(14日、東京・後楽園ホールで開幕)に臨むことを決意。まずは、シングル未勝利の丸藤正道(38)とのAブロック公式戦(14日)に全神経を集中させた。

 この日早朝、潮崎が訪れたのは東京・西麻布にある妙善寺だった。快く迎えてくれた的場徳雅住職(35)はその心情を察したのか、何も言わずにほうきとちりとりを手渡した。向かったのは隣接する墓地だ。

 樹齢100年を超える見事な桜の木がそびえ、枝の間からは近隣の六本木ヒルズが見える。都会の喧騒とは対照的に静かな時間が流れる空間で、潮崎は無心でほうきを動かした。その後は住み込みの学僧とともにお堂内の雑巾がけを行うと、的場住職は「掃除は修行の中でも大切なこと。心のゴミを払うことを念じながらすると、心の中がスッキリするんです」と諭した。

 実は2年前の夏にも潮崎は同寺を訪れていた。当時は全日本プロレス所属で、去就に揺れていた最中だったが、その1か月後に全日本退団を決意するに至ったのだ。今回訪れたのも「ここ最近は結果を出せず、正直、何をやっているのか分からない状況」(潮崎)と悩みを抱えていたからにほかならなかった。

 唯一手にしていたGHCタッグ王座は1日の横浜大会で陥落。GHCヘビー級戦線(王者はエディ・エドワーズ)にも7か月からめていない。だが「新弟子のころ道場の掃除をした時を思い出した。失うものはないし、まっさらな気持ちでリーグ戦に臨める」と修行の成果は大きく、迷いを吹っ切ることに成功した。

 リーグ戦最大のヤマ場は初戦(14日、後楽園)で激突する丸藤だ。「シングルで勝ったことがないけど、ここで新しい光景を見せないと、ノアの未来がない」と表情を引き締めた。

 最後は戦いの神「摩利支天(まりしてん)」に必勝祈願し「俺にとってラストチャンスになるかもしれない。チャンピオンがリーグ戦に出ていないからこそ優勝してベルトを取り返す」と断言。邪念を振り払った男が今リーグ戦の主役になりそうだ。