ノアの杉浦貴(47)が29日、心臓手術を決意するに至った真意を明かした。実はV14の最多防衛記録を樹立したGHCヘビー級王者時代に不整脈の症状が出始め、リスクを抱えながらリングに上がり続けてきたという。くしくも重傷者が続出している時期に長期欠場に入る杉浦は、自らの経験を踏まえてマット界に再発防止を訴えた。

 杉浦は5日に長期欠場を発表。病名は「心房細動」で、7月14日に都内の病院でカテーテル手術を受ける予定だ。手術の1か月前から血液をサラサラにする薬を服用しており、6月シリーズから欠場している。

「この前のGHC戦(25日、福島・郡山)は中嶋勝彦と小峠篤司が務めて盛り上がったみたいだし正直、ジェラシーはある。ただ今はしっかり治したい」

 最初に兆候が出たのは杉浦がGHC王者だった2010年8月11日。秋山準との防衛戦に向けた調印式の日だった。道場で練習中に気分が悪くなり、救急車で搬送された。不整脈の症状だった。

 さらに14年6月3日にも地下鉄ホームで体に異変を感じ、救急車を呼んでいる。

 医師からは「若いうちに手術をしたほうがいい。将来的に脳梗塞や心筋梗塞のリスクがある」と勧告を受けていたという。しかも服用していた薬の量も増え、次第に効果がなくなっていた。気分が悪くてフラフラすることもあり、症状が悪化していることは自覚していた。

 それでも「団体が厳しい時期だったから、休むという選択肢はなかった」と強行出場を続けてきた。だがノアが新体制に移行して5か月が経過した4月、内田雅之会長(55)に状況を報告すると「それなら早いうちに休んだほうがいい」と促され、完治を目指すため手術に踏み切ることを決めた。

 プロレス界では今年に入り本間朋晃(40)、柴田勝頼(37)、髙山善廣(50)が試合中のアクシデントで負傷し、長期欠場が続いている。病気の杉浦とはケースが異なることもあり「突発的なケガもあるし、それはケガをする本人にも分からないけど…」と前置きしながらも「人に『休め』と言われないと、レスラーは自分から休めないもの。ドクターなりトレーナーなり、判断できる人が言うべきだと思う」と、周囲からストップをかけることの重要性を訴えた。

 復帰は10月の予定。「もう1回頂点を目指したいし、そのためのメンテナンス」。心臓に毛の生えた完全無欠のハレンチ王として、再びリングに戻る決意だ。