ノアの蹴撃戦士・中嶋勝彦(28)が5日、GHCヘビー級王座奪取への思いを激白した。王者・杉浦貴(46)との王座戦(23日、横浜文化体育館)には、低迷する方舟マットの再浮上をかけて臨むという。生え抜きではない男が団体を愛する気持ちの根底には、8年前にノア創業者である故三沢光晴さん(享年46)から受けた“恩義”があった。

 中嶋がGHCヘビー級王座に挑戦するのは今回が4度目。しかも3月19日の後楽園大会以来わずか7か月の間隔しかなく、相手は同じ身も心も黒い王者の杉浦だ。前回はあと一歩及ばなかっただけに「ヘビー級のシングル王座はまだ一つもつかめてない。今度こそモノにしないといけない」と表情を引き締めた。

 取り巻く環境が危機感を強めている。新日本プロレスと全日本プロレスは中嶋と同じ20代の若き王者がけん引する中、ノアだけはベテラン王者がトップに君臨。さらには集客面で苦戦が続いている。そのため「団体自体が厳しいじゃないですか。どうにかできるのは俺たちの世代。すぐにやらないと次のノアはない」とまで断言した。

 ダイヤモンドリング(旧健介オフィス)を離れて、正式にノア所属となったのは今年1月。まだ9か月の在籍ながら、団体への愛情は誰よりも深い。その気持ちを支えるのが三沢さんへの“恩義”だ。2009年6月13日の広島大会で急逝する前年の08年、当時20歳のジュニア戦士だった中嶋は7月13日の博多大会、そして12月7日の日本武道館大会で2度、シングルの相手を務めてもらった。三沢さんが他団体の若手、しかもジュニア選手に胸を貸すのは異例のこと。それだけ目をかけてくれた証拠だった。

「何で自分なのか。あの時は意味が分からなかった。だけどあの経験は宝物。もうできないわけだし。(GHC挑戦は)三沢さんが導いてくれたのかもしれないし、その三沢さんが巻いたベルト。不思議な縁」と中嶋は神妙な表情で語った。

 くしくも横浜は13年10月5日に当時の王者・KENTA(35=現WWEのヒデオ・イタミ)に初めて挑戦した場所。

 団体を支えるため、三沢さんに恩を返すため、必ず王座奪取を果たす覚悟だ。