優等生に変身した野獣が底力を見せた。ノアのGHCヘビー級選手権(21日、福岡国際センター)は、王者の藤田和之(51)がゼロワンの〝弾丸男〟田中将斗(49)を退け、初防衛に成功した。

 2月23日の名古屋大会で中嶋勝彦を破り、同王座を初戴冠した藤田はノアに入団。それを機に礼儀正しい〝人間・藤田和之〟になり、所属として初のタイトル戦を迎えた。

 試合開始のゴングから90秒間はにらみ合いが続いたが、グラウンドの攻防では落ち着いて対処。序盤からペースを握った。

 挑戦者の右ヒザ攻めで苦悶の表情を浮かべる場面もあったが、目だけは死んでいない。監獄固めで捕らえると、次第に野獣に姿に戻った。「オラッ、起きろ!」と叫びながら気迫満点の張り手とエルボーを見舞う。

 さらに田中のスライディングDをキャッチしチョークスラムで反撃するや、エルボー合戦、壮絶なヘッドバットの打ち合いを制した。最後はパワーボムからサッカーボールキックを放ち、餅つき式パワーボムで勝利した。

 ところが、勝ち名乗りを受けるや再び優等生に逆戻り。リング四方に深々と頭を下げて引き揚げ「本気の舞台で本気の相手と、本気で戦うことができ、この上なく幸せでございます。またどうぞ、よろしくお願い申し上げます」と語った。

 しかも杉浦貴、ケンドー・カシン、桜庭和志、鈴木秀樹の「杉浦軍」メンバーがビールを持って乾杯しようとするが、藤田は「お心はありがたくちょうだいしますけど、もうそういうのはなしにしていただければ。私はお先に失礼します」と丁重に断りを入れ控室へ。残された4人が途方に暮れる様子が印象的だった。