ノアの悩めるエース、清宮海斗(25)が、シングルリーグ戦「N―1 VICTORY」(12日、東京・後楽園ホールで開幕)で低迷脱出を図る。

 今春から黒星が先行する大スランプに陥っているが、発端となったのは〝プロレスリングマスター〟武藤敬司に挑戦した3月のGHCヘビー級選手権。惨敗を喫した試合中に脳震とうを起こし、病院に救急搬送されたが「悔しくて振り返るのも嫌。武藤敬司という大きな山を登り、あの記憶を動かさなければ前に進めない」と闘志をみなぎらせた。

 N―1では武藤と同じAブロックに組み込まれ、リベンジの好機となる公式戦は26日の後楽園大会に決まった。「とてつもなく大きなチャンス。人生を懸けるものになる。N―1のタイトルももちろん大事だけど、それ以上かもしれない。先は考えない」と決意を示した。

 復調の手応えもつかみつつある。5月に大流血戦を強いられたNOSAWA論外を、今月3日の横浜大会で撃破。屈辱の清算に成功し「自分がこうしたいというものを素直に出せた。それは野性味や本能といったもの。自分の中でどこかフタをしていたものを開けられた」と振り返った。そのうえで「悩んで動かせなかった景色が動き始めた。もっと動かしたい。それがAブロック、武藤敬司にある」と光明を見いだした。

 リング外でも「自然散策でいつもなら気にならなかったことに気づく。草のにおいや太く強く育っている大木に圧倒されたり、自然の生きる力を感じる。自分の中の野性味が刺激される」。忘れていた〝野性〟を呼び起こし、武藤超えを果たせるか。