両国が魔界の邪悪な色に染まった。ノア2日の東京・両国国技館大会で行われた注目の丸藤正道(39)対グレート・ムタの初対決は予想を超える名勝負の末、ムタが完勝を決めた。

 現世時間の11月2日午後7時39分、両国周辺の時計の針が一気に逆回転した。大歓声を突いて赤いライトを背負ったムタが降臨する。先にリングインした丸藤の左肩から胸には、邪悪な魂が宿ったようなペイント。フードをかぶったまま微動だにせず、赤コーナーから白基調のペイントを施したムタを見据えた。

 そして天才と、天才の化身が運命のゴングを聞いた。代理人の武藤敬司(56)が流血戦になることを示唆していたこともあり、立ち上がりはお互いが慎重になるかと思われたが、先にムタが動いた。バックを取るやムクリと起き上がり緑の毒霧を噴射。いきなりムタワールド全開だ。

 イス攻撃は逆に丸藤に奪い返されるも、イスを振り上げた瞬間にムタが赤い毒霧を噴射。丸藤は顔面を押さえて腰からマットへ転落。魔界の住人は一気に邪悪な攻撃に転じた。テレビカメラで顔面を殴打すると、大流血の丸藤にフラッシングエルボーからSTF。丸藤もトラースキック3連打から不知火を決めるが、ムタは下から緑の毒霧を噴射。リング上に消火器まで持ち込んだ。

 しかしドラゴンスクリューに耐えた丸藤は逆に消火器を噴射。白煙の中でトラースキックを挟んで虎王を連打する。4度目の毒霧は口を手で封じたものの、何とムタは瞬時に両手で魔界の空気を燃やし、顔面に炎を発射。完全に視界を奪うと、前後からの閃光魔術弾3連打で3カウントを奪うと、ゆらり魔界へ消え去った。

「俺のはるか上をいかれた。会うチャンスはもうないのかもしれないけど、絶対に借りは返す!」と丸藤は再戦を訴えた。

 永遠に不可能と思われた初遭遇は、新たな名勝負の予感を漂わせて幕を閉じた。