新型コロナウイルスに打ち勝った! 新日本プロレスのIWGP世界ヘビー級王者の鷹木信悟(38)が、EVILとのV2戦(5日、埼玉・メットライフドーム)を突破し、完全復活を証明した。決戦を控えた8月にコロナに感染したが、復帰戦となった大舞台で躍動。完全無欠の男が奇跡を起こした裏には〝鷹木式サバイバル生活〟とアクシデント続きの最高峰王座を巻く者としての責任感、加えて師匠・アニマル浜口氏直伝の「気合」があった。


 挑戦者のEVILは4日に結成した新チーム「ハウス・オブ・トーチャー」のSHO、ディック東郷、高橋裕二郎をセコンドに就けてリングイン。鷹木は事実上、1対4のハンディ戦で大苦戦を強いられた。

 だが、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンからもBUSHI、内藤哲也、SANADAが助太刀に入り、数的不利は解消された。EVILと1対1の状況をつくり出した王者は、強烈なパンピングボンバー一閃。最後はラスト・オブ・ザ・ドラゴンで乱戦を制した。

 試合後のリング上では珍しく「しんどかったよ」とつぶやいた。発熱により8月15日静岡大会から欠場し、同18日にコロナ感染が発表された。王座戦まで3週間を切っており、出場も危ぶまれた。

 だが、運よく軽症だったこともあり、タイトル戦の欠場は一切考えていなかった。IWGP世界王座を巡っては、前王者のウィル・オスプレイが全治未定の首の負傷、初代王者の飯伏幸太が誤嚥性肺炎で王座戦を欠場するなど新設以降アクシデント続きで「呪われたベルト」と揶揄する声も耳に入っていたからだ。

「そういう反応もみてて、なんでもかんでも『呪い』とかに持っていかれてたからさ。チャンピオンとしての責任感はすごくあったよね。3代目(王者)の俺まで出られないなんて事態は絶対避けたかった」と振り返る。

 呪いなどないことを証明したい。その思いから、感染が発表されてからわずか2日後には軽い自宅トレーニングを開始。保健所からの弁当支給も断り、レスラーとしての体づくりを意識した独自の食事法を貫いた。

「食わないものを受け取っても悪いしね。俺はサバイバルをイメージして、いつも米とか缶詰とか冷凍の肉とか大量の食材を備蓄してるからさ。どうせ味がないから、米食いまくって缶詰と、ビタミン剤を飲んでたよ」

 なんともたくましい〝鷹木式サバイバル生活〟で体重は4キロ落ちたが、隔離解除後は1週間の猛トレーニングを積み決戦前には元通りに。心肺機能の低下も懸念されたものの、問題は起きなかった。

「どんな逆境でも気合と根性で乗り越えてきたからね。普段からの精神修行がプラスに作用したかなと。浜口ジムに入門してから、かれこれ20年の積み重ねだよね」

 復帰が発表された翌8月31日は浜口氏の74歳の誕生日だった。娘の京子に復帰の報告とお祝いの連絡を入れた際に「大暴れしてね。応援してます。やればできる!と、改めて「気合」を注入されたこともモチベーションになったという。

 これで7月25日の東京ドーム大会に続き、スタジアムマッチのメインで防衛に成功。王者での「G1クライマックス」(18日、エディオンアリーナ大阪で開幕)出場も確定し、その先には来年1月4、5日の東京ドーム大会も見えてくる。団体旗揚げ50周年のメモリアルイヤー幕開けとなる東京ドーム決戦の主役を、文字通りのたたき上げである鷹木が務めれば、これ以上痛快なことはない。

「新日本のリングは、実力があればチャンスは誰にでもあるってことを証明したいよね。3年前の自分に今の状況を教えても『何、言ってるんだ?』って答えると思う。自分でさえ想像しえなかった先に何が見えるのかは、自分自身の力で見てみたいよね」

 いまや押しも押されもせぬ業界の主役となったザ・ドラゴンがG1初制覇、そして歴史的大会の主役の座を目指し、さらなる高みへ駆け上がる。