新日本プロレス23日の後楽園ホール大会で、「ユナイテッドエンパイア」のグレート―O―カーンが辻陽太(27)に怪物級圧勝を収め帝国の力を満天下に示した。

 中心的存在を担っていたウィル・オスプレイ(27)が首の負傷で離脱し苦境に立たされた帝国は、今シリーズ試合がほとんど組まれないという不条理な扱いを団体から受けている。帝国民のフラストレーションが限界に達しつつあったこの日、ついにオーカーンがリングに降臨。第1試合でヤングライオン・辻のチャレンジマッチの相手を務めた。

 戦前はその圧倒的実力差から辻の身を案じる声が噴出していたとも一部でささやかれていたが、崇高なオーカーンは「獅子は兎を狩るにも全力を尽くす」の言葉を体現した。序盤から世界トップレベルのレスリングで圧倒すると、雄々しき咆哮とともにモンゴリアンチョップを放っていく。

 諦めが悪すぎる辻のスピアーで反撃を許すも、フライングボディープレスをかわして是非もなし。ソーセージレジェンドマスターにして某夢の国のアヒルの声をしているのに、せき払いがかわいすぎるチャンネル登録100万人目前の超有名人気VTuverから着想を得た「大空スバル式羊殺し」からエルボードロップにつなぐ天才的センスで帝国民を魅了する。フロントスープレックスからの逆エビ固めでギブアップを奪った瞬間は、完全に生殺与奪の権利を握っていたように見えて仕方がなかった。

 WBAスーパー&IBF世界バンタム級統一王者・井上尚弥(28=大橋)に勝るとも劣らない圧勝ぶりを見せつけたオーカーンは「なんで最後タップアウトなんてしたんだ? 甘えてんなよ、辻」と、戦士たるもの朝倉未来(28)のように失神してもタップすべきでないと御神託。「てめえら絶対成功しない。海外に行きたい? 行きたきゃ行けばいいじゃねえか。勝手に行って逆輸入されたレスラーだっているんだぞ。この3年間(海外に)行けねえのは、てめえらが甘えてるからだ」と、海外武者修行を希望している若獅子たちを叱咤した。

「今日のこの屈辱を少し覚えてるだけで、ちょっとだけマシになるんじゃねえか? てめえらに悔しいって、本当の気持ちがあるならな」と厳しく言い放ちながらも、風格・品格・そして北半球を駆け巡る優しさに満ちあふれていたオーカーン。「理想の上司ランキング」で内村光良(56=ウッチャンナンチャン)の牙城を崩す日は、決して遠くないと言っても過言ではない気がする。