30日の新日本プロレス愛知県体育館大会でNEVER無差別級王者の鷹木信悟(38)に挑戦する棚橋弘至(44)には、復権に向けたモチベーションがある。新型コロナウイルス禍により、プロレス界が置かれた現状だ。「逆風」も「追い風」もエネルギーに変え、その実力を高く評価する王者からベルトを奪取する。

 NEVER王座初挑戦を控えた棚橋は、前哨戦で連日肌を合わせる鷹木を「こんなに安定感のある選手は見たことがないですね。コンディション、テンション、技の正確性。トータルで最高評価ですよ。『眠れる森の棚橋』を呼び起こされてる感じです」と絶賛。王者の実力に敬意を示すからこそ、ベルト奪取への思いも強い。

 また鷹木からは「再起ではなく進退をかけろ」と要求されたことについては「いや、もう進退かかってるでしょ。負けたら終わりかな…って思ってます。(自分への)期待感的にはゼロになりますよね。棚橋がノーリスクかといえば、そうではない気がします」と返答。近年は低迷が続いていることから危機感もあらわにした。

 燃える理由は他にもある。コロナ禍の影響に苦しむプロレス界は、緊急事態宣言下でさらなる窮地に立たされた。業界の盟主・新日本でも18日の後楽園大会から空席が目立つようになり、同大会で棚橋は「悔しいです」と吐露した。

 原因は大きく異なるものの、2000年代の暗黒時代を知る棚橋には当時の苦い思い出がよみがえる。「ここで俺がめげたらダメだなって使命感もあって。今の状況が僕に『頑張れよ』ってエネルギーをくれてますね。やっぱりフラッシュバックするじゃないですか、厳しかった後楽園の情景が。記憶がフラッシュバックすると肉体も戻るんですよ。肉体も時代に逆行しようと思います」

 暗い話題が続く一方で、プロレス界全体を見渡せばベテラン勢の活躍が目立つ。師匠の武藤敬司に至っては58歳にして2月12日のノア日本武道館大会でGHCヘビー級王座に挑戦する。

 棚橋は「武藤さんの存在は光ですね、やっぱり。12年前(2009年1月4日東京ドーム大会のIWGPヘビー級王座戦で対戦)の年齢が武藤さん46だったんです。僕は今44なんですよ。そのシチュエーションにも力をもらいますし」と語り、大きな刺激を受けている。

 25日の後楽園大会では鷹木と6人タッグ戦で激突し、30分フルタイムドローの熱戦を展開。あらゆる状況を発奮材料に変え、NEVER王座戦から再起を果たす。