史上初の秋開催となった新日本プロレス最高峰のリーグ戦「G1クライマックス」が、19日にエディオンアリーナ大阪で開幕。いきなり実現したAブロック天王山は前年度覇者の飯伏幸太(38)がオカダ・カズチカ(32)を撃破した。史上3人目の2連覇へ向け最高のスタートを切った裏には、新型コロナウイルス感染拡大による苦境から生まれた進化があった。祭典は優勝決定戦(10月18日、東京・両国国技館)まで約1か月にわたり、各地で激闘を展開する。

 試合が動いたのは20分過ぎだ。カミゴェ式ショットガンドロップキックを狙ったオカダを捕らえ、そのままシットダウン式パワーボムを発射。ボマイェからのカミゴェで激闘に終止符を打った。飯伏は「僕は逃げない、負けない、諦めない、裏切らない。そして本当の神になる」と蝶野正洋、天山広吉に続く史上3人目の2連覇を誓った。

 次戦、23日北海きたえーる(札幌市)大会の相手はジェイ・ホワイト(27)だ。昨年は最終公式戦でオカダ、優勝決定戦でジェイを連破し優勝したが、今年1月の東京ドーム2連戦(4、5日)では2人に連敗。開幕2連戦は「この数か月でどうなったかが試される」(飯伏)と意気込む重要な位置づけとなる。

 新型コロナウイルス禍は全てのアスリートに苦難を与えたが、飯伏もかつてない危機に追い込まれた。独自の練習で現在の地位を築いた天才は、練習生時代から社会人プロレスの「OPG道場」(千葉県内)を「研究所」として活用。だが、憩いの場も一時閉鎖を余儀なくされた。「自分で鍵を持ってたし、いつでも練習に行ける。研究所は24時間開いてるようなものだったから。自由な空間がいきなりなくなった恐怖感に襲われて…」と振り返る。

 代わりに初めて自分で料金を払いトレーニングジムを利用するようになり、そこには新たな世界が待っていた。「ああ、俺、小さいところでやってたなと。器具とか全然違うものがあって、今でも使い方が分からないけど。試してみたら肉体が変わった。人の目線があると『あと1回(器具を)上げよう』みたいな。やっぱり人目を気にして最初はジムに行くのが怖かったけど、やってみたら今までにない刺激があった」

 さらにアクティブになり、屋外ランニングコースでの中距離走にも取り組んだ。練習場所が失われた災いが転じ、肉体改造と心肺機能強化に成功したのだ。かつて30代になったら第一線で戦えなくなるのではないかと思い込んでいたが、38歳を迎えても驚異のコンディションを維持。「今、まだ成長期ですよ。まだ成長するんだっていう部分を感じられた期間だったなと。ここ3~4年は肉体的には止まってたんで。それが今年に入って、トレーニングの変化で自分の成長する部分がまだあることを気づかされた」と進化を感じている。

「肉体も精神も今がマックス」と豪語するゴールデン☆スターが、史上初の3年連続優勝決定戦進出から2連覇を達成し、唯一無二の「神」の称号を狙う。