プロレス界の盟主が帰ってきた! 新型コロナウイルス禍により3月から大会を中止していた新日本プロレスが15日に無観客試合を開催し、110日ぶりに活動を再開。メインイベントの6人タッグマッチでは、IWGPヘビー級&インターコンチネンタル2冠王者の内藤哲也(37)が貫禄の勝利を収め、復活のリングを締めくくった。万感の思いで帰還した制御不能男は本紙に独占手記を寄せ、自粛期間中に再認識したプロレスと自身の役割について熱い思いを激白した。

【独占手記】ついに新日本プロレスが再開の日を迎えました。誰よりもこの日を待ち望んでいたのは新日本プロレスを応援してくださるお客様だと思いますが、俺自身も本当に心待ちにしていました。試合がやりたくてもできない状況になってみて、改めてお客様の大歓声を受けながら試合をしていた「日常」が、すごくぜいたくな時間だったんだなと再確認しましたね。

 最初は1~2週間休めば収まるものだと悲観してなかったんです。それが今シリーズも、次のシリーズもできないみたいになって、もしかしたらこのままプロレスができなくなっちゃうんじゃないかなと思ってしまいましたし。俺は去年、目をケガしていつまでも「今」は続かないんだなと実感しました。やりたいことは今やらないとと今を大事にしてきた。2本のベルトを持った今の内藤哲也を見せられない日々は悔しかったです。

 無観客試合に関しては、どちらかといえば最初はやりたくなかったです。プロレスって、もちろんリング上で戦っている選手が一番大事なんですけど、それだけでは最高の空間はつくれない。俺自身がプロレスを会場で見る楽しさも知っているので…。でも実際にやってみたら、やっぱり楽しいなと。純粋にプロレスをやることの楽しさ、できることのありがたさをすごく感じましたね。

 そりゃ、一日も早く今まで通りに戻ってほしいですよ。でもいつまでも「あーあ、大観衆の前で試合したかったな」って思ってたら前に進めない。逆に観客席に誰もいない状態でプロレスをすることもなかったので、この状況を俺なりに楽しみたいと思いますよ。今の状況を楽しむことによって、お客様をフルで入れられるようになった時は、さらに楽しめると思うんです。この先、今まで以上の熱狂空間が待っていると信じて今の戦いに集中したい。

 コロナの影響で、いろいろな面で苦しんでいる人がたくさんいると思います。そういう方々に「歯を食いしばって立ち上がっていくプロレスラーの姿」をお見せしたいし、何かを感じ取ってもらえたらうれしいなと。

 俺はプロレスラーを目指している時、右ヒザの靱帯を切ってしまった。手術した後、すぐ見に行った大会で「U―30」の決勝トーナメントが開催されていたんです。2003年4月23日の決勝戦、棚橋弘至対真壁刀義も足を引きずって広島サンプラザまで行きました。

 まだ若手だった棚橋選手が歯を食いしばって先輩たちに立ち向かっていく姿は、ヒザが動かなくて絶望していた自分に希望の光を与えてくれたし、「プロレスに元気をもらうって、こういうことなんだな」って初めて感じた瞬間でした。今、それを率先してやっていくのがロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンであり、2本のベルトを持っている史上初の男、内藤の役割だと思ってます。

 今日はお客様がいない空間でのマイクになりました。プロレスに限らずですけど、一体感ってすごく重要。「デ・ハ・ポン」の大合唱って、リングと会場のお客様が一つになれるような象徴的な場面だと思うんです。それがしばらく一緒にできないのかと思うと寂しいですけど、超満員のお客様と大合唱ができるその日まで、このベルトを持ち続けなければいけない理由が一つできましたね。また超満員の会場でお会いするその日まで…トランキーロ! あっせんなよ。