新日本プロレスの年間最大興行「レッスルキングダム14」(5日、東京ドーム)で、獣神サンダー・ライガーが現役生活にピリオドを打った。平成の時代を駆け抜けた獣神伝説が、令和初のドーム決戦で幕。引退試合でライガーを介錯したIWGPジュニアヘビー級王者の高橋ヒロム(30)は、リング上での「最後の会話」を明かした。

 新日ジュニアの未来のバトンを渡されたのはヒロムだった。ライガー自身の口で対戦相手に指名されたヒロムは、約束通り4日の東京ドーム大会でウィル・オスプレイからIWGPジュニア王座を奪取。王者として最後の対戦相手を務め、そしてライガーから最後の3カウントを奪った。

 本紙の取材に応じたヒロムによれば、引退試合終了直後にライガーから直接言葉を贈られたという。「『ありがとう』って、それだけ言ってもらいました」

 このやりとりには知られざる背景がある。ライガーは1998年1月4日東京ドーム大会で長州力の引退試合に出場。5人掛けマッチの最後の相手として対戦し敗れたが、自身の引退試合を前に「あの試合でラリアートもらってひっくり返ったとき、フォールされながら『あとは頼んだぞ』って言われたんだよ。俺は『頼んだぞ』ではないけど『あとはもう俺じゃない。お前が頑張れよ』って言って引退したいね」と振り返っていた。

 最後の戦いを終え、横たわるライガーに向かってヒロムは「あなたがつくってきたジュニアを、俺が必ず頂点に持っていきます」と絶叫。声をかけられるまでもなく、ヒロムにはこれからの新日プロを背負う覚悟と責任感があった。だからこそライガーから伝える言葉は「ありがとう」のひと言だけだったのだろう。

 ライガーは引退会見で「新日本の未来は明るいなと。ケガだけ気をつけて、すごい試合をファンの皆様に提供してくれればと思います」。後を託せる頼もしい後輩たちが多くいたからこそ、思い残すことなく現役生活の終焉を迎えられた。