平成の大エースがピンチだ。新日本プロレス11日のエディオンアリーナ大阪大会でジェイ・ホワイト(26)とのV1戦に臨むIWGPヘビー級王者・棚橋弘至(42)に6日、黄信号がともった。2日の札幌大会ではジェイのTTO(裏足4の字固め)で屈辱のギブアップ負けを喫し、古傷である右ヒザの不安が露呈。「第8次棚橋政権」に早くも暗雲が垂れ込めている。

 ジェイとの大阪決戦が迫る棚橋は、これまでの前哨戦で苦戦が目立つ。「過去に何度も追い込まれた状況でのタイトル戦はあったし、それほど焦りはないんです。ただオカダ(カズチカ)に勝ったり、結果を残している挑戦者なので。警戒はしています」と険しい表情を浮かべた。

 2日のギブアップ負けによって、1年前に「変形性関節症」で欠場に追い込まれた古傷の不安が改めて浮き彫りになったのは事実。それでも「いつもヒザ(の状態)と闘ってきたので、信頼関係はできてますから。無理を言えば、多少無理は聞いてくれる。『開けゴマ』じゃないですけど『動けヒザ』と棚橋が言えば、ヒザは動く」と持ち前のポジティブ思考で強気を装ったが…。

 2016年からサポートする新日プロの菅野洋介トレーナー(38)は「常に危険と言えば危険。関節そのものが変形しているので、それは治ることはないです。一般人であれば歩くだけで激痛だと思います。実際にヒザが痛くてロープに上るのもひと苦労。(悪化すると)必殺技のハイフライフローが出せるかどうかということにもなってくる」と現状を説明する。

 周辺の筋力を効果的に強化することで、リング上のパフォーマンスが向上している一面もあるが、ヒザそのものが完治することはない。さらに悪化すれば昨年、人工関節置換術を行った武藤敬司(56)のように手術に踏み切る選択肢も考えられ、その場合は現在のようなプロレスが再びできる保証はなくなる。

 以前はサッカー界に携わっていた菅野トレーナーが「あの状況で現役をやっている人のほうが圧倒的に少ない」と評するほど予断を許さない状況なのだ。
 この日の長野大会ではスリングブレイドを決めるなど軽快な動きでチームを勝利に導いたが、42歳の王者にとって試練のV1戦となりそうだ。