全日本プロレス春の祭典「チャンピオン・カーニバル」は、25日の東京・後楽園ホール大会でBブロック最終公式戦が行われ、初出場の天才・丸藤正道(38=ノア)が秋山準(48)との再会マッチを制して優勝決定戦(30日、後楽園)進出を決めた。絶縁状態だったノアと全日本の選手が交わることは、ここ数年では異例中の異例。今回の一戦を機に両団体の再交流が一気に加速しそうだ。

 今年のカーニバル最大の注目カードがついに実現した。ともに全日マットでデビューし、ともにノアに移籍。そして2012年12月23日ノア有明大会での一騎打ちを最後にたもとを分かった2人が、再びリングで対峙したのだ。

 入場時から最高潮に達した会場のボルテージとは対照的に、両雄は空白の5年4か月を確認するかのようにじっくりと組み合った。試合が動いたのは4分過ぎ。丸藤の顔面蹴りでスイッチが入った秋山が、冷酷モードに変わる。場外でのパイルドライバー、頭をつかんでマットに顔面から叩きつけるなど冷酷無比な攻撃が続いた。

 さらには2分間以上に及ぶ執拗なフロントネックロックに。最後の一騎打ちで丸藤が敗れた技だった。嫌な記憶を振り切るように、丸藤は18分過ぎから一気に反撃へ転じる。必殺の虎王(二段式ヒザ蹴り)を連発すると、最後はヒザのサポーターを外し、実にこの試合10発目の虎王を叩き込んで勝負を決めた。

 試合後は両雄が無言のグータッチを交わす劇的な光景も。丸藤は「強くて怖かった。しっかり優勝しないと、この勝ちも意味がない。風は俺に吹いている。秋山準、いや秋山さん、ありがとう」と心の底から振り絞るような声で語った。

 丸藤が優勝に王手をかけたことで新たな波が起き始めた。会場を訪れていたノアの内田雅之会長(56)は「まだカーニバルの最中ですが…」と前置きしながらも、興奮を隠せなかった。

「これで一気に(両団体の)ハードルが下がったんじゃないですか。このまま丸藤が何らかの爪痕を残したなら、今度はウチ(のリング)でという話にもなる。それにカーニバル(公式戦)で丸藤が諏訪魔選手やゼウス選手にやられたのを見たら、一矢報いたくなる。秋山社長だって黙っていないでしょう」

 つまりカーニバル後にも具体的な全日勢のノア参戦について交渉に入る可能性を認めたのだ。秋山らのノア離脱により冷え切っていた両団体の関係だが、かつてはノア所属の秋山が3冠ヘビー級ベルトを巻き、また丸藤が世界ジュニアヘビー級王者に君臨したこともあった。当時とは、両団体ともに首脳陣や選手が大きく変わった。

 交流が再開すれば、夢のカードが次々に実現することになる。

「丸藤が優勝して、3冠ベルトを取るくらいのことをやってくれたら話は早いと思います」(内田会長)。優勝決定戦は30日、後楽園。両団体にとって新たな歴史が始まる日となりそうだ。