全日本プロレスの秋山準社長(48)が22日、新3冠ヘビー級王者のジョー・ドーリング(35)に“リミッター解除”を命じた。ドーリングは21日の横浜大会で王座を奪取して、悪性脳腫瘍からの完全復活を証明。次にやるべきことがファンをも敵に回す大暴走だという。それが可能なら“不沈艦”スタン・ハンセン氏(68)や“超獣”故ブルーザー・ブロディ(享年42)に匹敵する歴史的な外国人選手になれると太鼓判を押した。

 21日の横浜大会でドーリングは王者の諏訪魔(40)を撃破。約2年9か月ぶり2度目の戴冠を成し遂げた。宮原健斗(28)、石川修司(42)、そして諏訪魔に続く今年4人目の3冠王者が誕生したことについて秋山は「群雄割拠ですよ。実力が拮抗しているから、誰が勝ってもおかしくない。ようやく上(ヘビー級上位)に駒が揃ったし、3冠に関しては何も心配してない」と目を細めた。

 特にドーリングの王座奪取については感慨深いものがある。「昨年(闘病中)のことを考えると奇跡。体が悪かったというのが一切分からないくらい何のブレもないし、逆に体がデカくなった気がする」と最大級の賛辞を贈った。ただし完全復活という最初の関門を突破したからこそ、今後は「昔のハンセンやブロディみたいな外国人がいないから、それくらいになってもらえれば一番いい」とさらなる高みを求めた。

 そのためにも新王者が乗り越えるべき壁があるという。「コメントとかを見るとまだ甘い。ファンに応援してもらいたいという気持ちがどこかにあるんだと思うけど、それを振り切らないと。『俺が暴れて全部相手の応援にしてやる!』くらいの気持ちで暴れてくれたら変わってくる」。つまり「善人」の部分を完全に捨ててしまえ、とアドバイスするのだ。

 実際に「ブレーキが壊れたダンプカー」と呼ばれた全盛期のハンセン氏は、ファンに恐怖感を与え、怒りをぶつけられる存在だった。声援よりも罵声や悲鳴のほうが多かったのも事実。誰からも愛されて応援される存在になったのは、大ベテランの域に達してからだった。また秋山自身も「冷酷」と呼ばれた時期があった。現役時代の鉄人・小橋建太(50)と対戦する際は「全部の声援が向こうに行っていい」との思いで非情攻撃を繰り返していたという。

「本当に突き抜けて強い外国人になろうと思ったら、それくらいの気持ちじゃないと無理。ここで止まるか、それ以上に行くかは彼次第」と秋山。社長指令を受けた新王者がどう変わっていくのか注目だ。