全日本プロレスのアジアタッグ選手権(2日、後楽園ホール)は王者の渕正信(62)、大仁田厚(59)組が秋山準(47)、井上雅央(46)組の挑戦を退け初防衛に成功した。右腸骨(腸骨翼)骨折の重傷を負いながらも強行出場した大仁田が邪道スタイル全開で勝利をアシストし、引退イヤーとなる2017年を好発進だ。

 戦前からルール問題でもめた一戦は予想通り、ハチャメチャな展開になった。PWFが認定するタイトルマッチにもかかわらず、リング上には王者組が用意した有刺鉄線ボードが設置されるありさま。それでも秋山組のセコンドとして同行した“悪魔仮面”ケンドー・カシン(48)が妙にいい働きをし、大仁田がセコンドに就けた邪道軍を蹴散らす。

 なぜか因縁のパンディータともみ合ったカシンは駐車場までなだれ込み、そのまま姿を消してしまった。いったい何をしたかったのかは不明だが、とにかく王者組のペースが乱される形で試合はスタートした。

 しかし、選手生命をかけて臨んだ大仁田が大暴れだ。昨年12月23日の超戦闘プロレスFMW高松大会で全治2か月の重傷を負ったが、痛み止めの注射3本を打ってリングに立つと、まずは井上にテーブル上へのパイルドライバーを成功させ、秋山の脳天をテーブルの破片でブチ抜いた。

 怒りの秋山からは爆弾の腰を容赦なく狙われ、皮肉にも有刺鉄線ボードのえじきになる場面もあったが、渕のピンチには秋山に毒霧を浴びせて救出。自軍の勝利を援護射撃した。試合後はマイクを握ると「秋山さんよ、井上選手よ、よ~く聞け! プロレスは、プロレスは、何でもアリじゃ!」と豪語し“聖水”をまき散らしながらさっそうとリングを後にした。

「彼のスタイルは否定できない。ヘルプがなければ負けていた」と同期を認めた渕に対し、大仁田は「もうちょっと暴れて、引退まで(ベルトの)価値を高めていこうかな」とニヤリ。10月の還暦に予定する引退試合に向け、59歳の邪道が最古のベルトを守り続けてみせる。