3冠ヘビー級王者ジェイク・リー(32)が8日、鉄人・小橋建太(54)から全日本プロレスの〝先導者〟に任命された。2022年の団体旗揚げ50周年を前に、個人的な活動として「温故知新」のOB訪問を実践中。鉄人からの期待を一身に背負ったジェイクは、王道トーナメント覇者で前王者・諏訪魔とのV2戦(21日、後楽園ホール)に必勝の思いを新たにした。

 ジェイクは現在、全日本プロレスの歴史を築いてきたレスラーたちを訪問しており、秋山準、川田利明に続き、小橋との対面が実現。「(全日本は)合体しては分裂して、過去は振り返らずにやってきた。でも50周年という歴史の中で、積み重ねてきたものがあるから今がある。どういった歴史の上に自分たちが立っているのかを、思い出させるようなことを僕らが発信していきたい」と、行動の意図を説明した。

 DDTの遠藤哲哉しかり、反体制派のトップレスラーから師事される機会が相次ぐ小橋も、ジェイクの実力と行動力を高く評価。「自分が引っ張っていかないといけない意味が分かってきたでしょう。トップとして走り続けないと会社の向上もない。ジェイクが走ったら、絶対その後をみんな追いかけてくるから。全体が引き上げられるんだよ」と、団体をけん引していく役割を求めた。

 さらに鉄人は1997年1月の故・三沢光晴さんとの3冠戦を例に熱弁を振るった。当時、王者は小橋でありながらエースの称号は三沢さんのもの。激闘の末に小橋は敗れたが「エースとはなんだっていう意味はその試合をして少し理解することができた。ジェイクには『チャンピオン=エース』というものを目指してほしいね。エースだから言えること、チャンピオンだから言えることがある。両方一緒だったらさらに発言権は増す」とアドバイスした。

 ただ、全日本の現エースは満場一致で宮原健斗だ。それを踏まえ「宮原相手にしっかりした防衛もしてほしい。そのためにも諏訪魔に防衛しないとね。進んだ時計を逆戻りにさせるわけにはいかない」とエールを送った。

 当のジェイクは「僕はどちらかと言えば『エース』をつくるために自分が負けられないという考え方。『俺に勝ってみろ』という心構えで臨んでいるので」と話したが、より圧倒的な存在にならなければいけないという思いは小橋の期待と一致する。

 6月の大田区大会で対戦が予定されながら、諏訪魔がコロナに感染し3冠王座を返上。ジェイクは王座決定戦に勝ってベルトを手にしただけに「今度の諏訪魔戦は、僕の中で本当に分岐点。時計の針を進める上で、すごく大切な対戦相手ですね」ときっぱり。「ここで完膚なきまでに叩きのめして、諏訪魔を専務業に専念させたい」と決意を明かす。

「温故知新」を実践する3冠王者がメモリアルイヤーの主役、全日本プロレスの新たな象徴を目指し、防衛ロードを突き進む。