全日本プロレスは10日、東京・後楽園ホールで会見し、本紙昨報通り秋山準(49)が8日付で「オールジャパン・プロレスリング」の社長を退任して取締役ゼネラルマネジャー(GM)に就き、団体オーナーの福田剛紀氏(53)が新社長に就任したと発表した。新体制に移行した老舗団体は、厳しい業界の荒波にどう立ち向かうのか――。
大会前に行われた会見には福田新社長と秋山GMが揃って出席し、新人事を発表。この他、大森隆男(49)が取締役から外れ、新たに十枝利樹氏(58)が社外取締役に就いた。
福田社長は「プロレスを見たことがない方や、他団体しか見たことがない方にも全日本プロレスを知っていただいてファン層を広げたい」と言葉に力を込め、「現場を仕切るGMとして今後も貢献したい」と語った秋山GMと握手を交わした。
団体の新たな船出に選手の反応はさまざまだ。3冠ヘビー級王者の宮原健斗(30)が「誰がトップだろうと関係ない。ファンのために戦って全日本を引っ張るだけ」と冷静に受け止めるや、暴走男の諏訪魔(42)は「これからも好き放題、わがままにさせてもらう。よろしくってところだな」と不穏な言葉を述べた。
王道マットの行く末に注目が集まる中、福田社長は本紙に今後の方針を明かした。最初に掲げたのが“鎖国”だ。「秋山GMは自分が育てた若手選手に自信を持っています。外の選手を使わなくても、団体内で熱い戦いが繰り広げられるとの自信が生まれ始めたと思う」。エースの宮原を中心に青柳優馬(23)ら若手選手もメインを張れるまでに成長を遂げた。
秋山体制下では邪道・大仁田厚(61)や“野獣”藤田和之(48)らの外敵がかき回したが、当面は団体内での戦いを活性化させ、全日ブランドの価値向上を目指す。そのため、トップ戦線から一歩引いた位置にいる秋山GMへの期待も大きい。
「何らかのベルトの争いには加わっていただきたい。『壁』というものはいつの時代も必要。まだ隠居する年齢じゃありませんよ。本人の気持ちがいつ変わるかも分からないですし、私からもけしかけます」と語り、3年ぶりとなる3冠戦線復帰の可能性も出てきた。
休憩明けのリングで福田社長と秋山GMはファンの前であいさつし、大歓声を浴びた。歴史と伝統のあるリングが、大きな分岐点を迎えた。