どさんこレスラーは負けない。全日本プロレスの大器、ジェイク・リー(29)が6日「王道トーナメント」(15日、新潟・三条市厚生福祉会館で開幕)にかける思いを語った。北海道・北見市出身で、被災した故郷、そして母と交わした約束を胸に決戦に臨む。

 ジェイクにとってまさに“虫の知らせ”だった。「今朝、不意に午前4時前に目が覚めたんです。それでスマートフォンを見たら、大変なことになっていて…」

 すぐに札幌在住の母、五月さん(60)に連絡した。不幸中の幸いでけがはなかったが、タンスなど家具は倒れ、停電により車庫のシャッターも開かないという。

 だが「自分にできることがあるならば何でもしたい。でも今はこっちで戦います。ここで気持ちが揺れたり北海道に帰ったりしたら、母に『何シケた面してんの!』って怒られると思うので」と自分に言い聞かせた。

 女手一つで育ててくれた母には感謝しかない。特に2011年10月に一度引退し、復帰を決意した15年にかけられた言葉が忘れられない。

「『やっぱり戻る。戻らないと前に進めないから』って話したんです。そうしたら、ため息をついて『好きなようにやりなさい。ただし30歳でプロレスを続けるか、他へ行くかケジメをつけなさい』って。その言葉で覚悟が決まったんです」

 直後に一度は飛び出した全日プロに再入門した。「決断のリミット」である30歳の誕生日を来年1月19日に迎える。だからこそ王道トーナメントは、母に覚悟を示す絶好のチャンスとなる。

 1回戦(17日、東京・後楽園ホール)では秋山準(48)と激突する。「初戦のテーマは向き合うこと。逃げない自分を見せる。プロレスは人を元気にするパワーがある。自分も北海道と一緒に頑張りたい。帰って顔を見せることじゃなく、優勝することが母を一番安心させられると思う」

 故郷のため、そして母のために、過酷な戦いを乗り切ってみせる。