【全日本】ゼウス 3冠初防衛の原動力

2018年08月27日 16時30分

トップロープ越えのトペを石川(下)に決めるゼウス

 8年前の誓いは忘れていない。全日本プロレス26日の流山市・キッコーマンアリーナ大会で行われた3冠ヘビー級選手権は、王者のゼウス(36)が世界タッグ王者の“大巨人”石川修司(42)を撃破し、初防衛に成功した。最強の難敵を退けた王者の原動力となったのは、2010年4月にプロボクシングからプロレスに復帰した際、不退転の決意を込めて作ったあるアイテムだった。

 石川の猛攻にゼウスは防戦一方だった。ファイヤーサンダー、顔面へのニーリフト、スプラッシュマウンテン…。25分過ぎにはエプロンから場外への脳天砕きで垂直に落とされた。7月29日に地元大阪で感涙の初戴冠を果たしてから約1か月。王座陥落が目前に迫った。それでもハイキックで猛攻を止めると、130キロの大巨人を抱え上げてジャックハマー一撃。大逆転で30分を超える死闘に終止符を打った。

 実に8年間、同じリングシューズを履き続けている。通常の寿命は約半年で、あらゆるスポーツでも異例だ。穴があけば布を当てて縫合し、ソール部分を交換した。
「プロレスに戻った時にもう後戻りできない、これが最後の挑戦やと。身をうずめようと自分に言い聞かせた。その気持ちを忘れないため、同じシューズを履き続けてるんです。もうボロボロですけどね、ハハハッ」

 2009年2月、ヘビー級ランキングが復活したことを受けてボクシングに転向。大きな話題を集めた。しかし同年12月のデビュー戦(クルーザー級)は4回判定負け。結局はこの1試合のみで翌年4月に引退し、大阪プロレスで復帰。挫折感を背負っての“帰還”だった。その後はプロレスだけにのめり込んだ。継ぎはぎだらけのシューズは原点回帰の証しでもある。苦闘の初防衛戦でも決して足元は揺らぐことはなかった。

 和田京平名誉レフェリー(63)は「8年間? そんなやついるわけないだろ。俺でも1年で2足だぞ」と語るも、ゼウスの話を聞くや「えっ」と絶句。「覚悟はいいよ。でも3冠王者だし自分を高めるためにも、新しいのを作ってもいいんじゃないか。古いのは家に飾ればいい」と助言した。

 目指す王者像を問われると王者は目を閉じて約20秒間、沈黙した末に「何にも負けることのない強い心を持った王者になろうと思います」と生真面目に語った。歴史あるベルトに自分なりの色を重ねていく決意だ。