【W―1】武藤万感 最後のムーンサルト

2018年03月15日 16時30分

河野(下)にムーンサルトを決めた武藤

 プロレスリングマスター・武藤敬司(55)が14日のW―1東京・後楽園ホール大会で「プロレス生活最後」のムーンサルトプレスを成功させた。今月末に両ヒザに人工関節を入れる手術を行うため、自身の代名詞と別れを告げる。だが周囲に悲壮感は全くない。現役時代は同じ月面水爆の名手だった元ノアの鉄人・小橋建太(50)が緊急エールを送り、復帰後の“生涯現役”を後押ししたのだ。

 ハイライトは18分過ぎだった。現在は各団体で活躍する愛弟子たちが集結した8人タッグ戦(武藤、浜亮太、SUSHI、宮本和志組VS河野真幸、大和ヒロシ、中之上靖文、KAI組)で、再会を懐かしむように肌を合わせた武藤は、大声援に背中を押されてコーナー最上段に上った。

 1発目は阻止されて2発目は自爆。しかしこの試合、3発目の試みに迷いはなかった。ひと呼吸置くと、すぐさま低空での高速ムーンサルトプレスをリング中央の河野に発射。文句のない勝利を決めると「不格好かもしれないけど、気持ちのこもったムーンサルトだったと思う。武藤敬司、悔いなし。新生・武藤敬司で必ず戻ってきます!」と万感の思いで声を振り絞った。

 今月下旬に手術を受け、年内は全休の予定。来年以降の復帰を目指すが、手術後の状況では現役続行が困難になる可能性も捨て切れない。そんな武藤にゲキを飛ばしたのが小橋だ。東日本大震災復興支援チャリティープロレス「ALL TOGETHER」(2011年8月、日本武道館と12年2月、仙台)では夢の黄金タッグを結成し、月面水爆の競演で被災地を勇気づけた。

 実は2月3日に東京・池上本門寺の節分会で久々に顔を合わせた際、武藤から手術に踏み切る決意を打ち明けられたという。「前から武藤さんと人工関節の話をしてたけど、とうとうやるのかって思った。ヒザが悪い人じゃないと分からないけど、相当しんどかったんだと思う。ヒザを取り換えたいくらいだから」(小橋)と、同じように長年にわたってヒザの痛みと闘っている小橋は理解を示した。

 仮に復帰できても、医師から月面水爆の使用を禁じられている。それでも「痛みから解放されたらまだ出していない潜在能力が発揮されるかもね。武藤さんならそれこそ、復帰してムーンサルトをやるかもしれない」(小橋)と強く信じている。「人工関節を考えているプロスポーツ選手の希望になってほしいし、ずっと現役でいてほしい」という盟友からの熱いエールを受け、プロレス界の至宝・武藤はしばしの間、休息に入る。