「頸髄完全損傷」高山にプロレス界からエール 前田、高田氏も支援を約束

2017年09月06日 11時00分

会見する(左)から石原真マネジャー、鈴木みのる、高木三四郎

 プロレス界の帝王・高山善廣(50)が「頸髄完全損傷」と診断されていたことが4日に明かされた。首から下が動かず医師からも現状では回復の見込みがないと宣告される厳しい状況でのリハビリが続く中、鈴木みのる(49)を代表とする有志が支援団体「TAKAYAMANIA」を設立。2006年には脳梗塞も克服した帝王が直面した人生最大の危機に格闘界には激震が走ると同時に、熱いエールが続出。業界が一丸となって帝王を支援する可能性が高まってきた。

 高山は5月4日のDDT大阪大会で頸髄を損傷。手術後も経過に良化が見られず、現在も首から下が動かない状況が続いている。8月中旬に関東の病院に転院。人工呼吸器を取り外せるようになったが「頸髄完全損傷」との診断で、現状では「回復の見込みがない」と言われているという。

 絶望の淵から奇跡の回復の希望を持ちリハビリを続ける帝王のため、プロレス界の有志は支援団体の設立を決意。試合会場での募金、応援グッズ作製、チャリティー大会などが活動趣旨となり収益は全て治療費に充てられる。会見に出席したみのるは「命をかけて戦った、自分の親友です。俺なんてどうでもいいんで、高山善廣に勇気をたくさんもらったと思うので、ぜひ皆さん力を貸してください。それと、彼は言いませんが、UWFの大先輩の前田日明さん、師匠である高田延彦さん、ぜひ力を貸してください」と涙ながらに訴えた。

 あまりに衝撃的かつ厳しい現実に、マット界からは続々とエールが届いている。鉄人・小橋建太(50)は「言葉が出ない…」と絶句したのち「リング上で試合ができなくてもプロレスラーはファンを勇気づける存在でなくてはならない。こんな状態で『頑張れ』と言われるのは酷だと分かっています。でもファン、ご家族のため、もう一度自分の力で立ち上がってほしい。高山選手ならそれができると思います」と言葉を振り絞り、支援大会が実現すれば協力する意思を明かした。

 また「団体としてできるだけの協力はさせてもらうつもりです。(支援大会も)ウチと日程が重ならなければぜひ協力したい。ご家族のためにも、一日も早い回復をお祈りしています」(秋山準全日本プロレス社長)、「高山さんといえばプロレス界の帝王だから。プロレス界全体でできることをするべきだと思う」(ノア・丸藤正道)といった声を筆頭に、高山が至宝ベルトを獲得したメジャー3団体が、早くも揃って協力の姿勢を打ち出している。新日本プロレスのIWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(29)も「プロレス界が一つになるべきだと思いますね。僕は医者がダメだと言っても、何かできるんじゃないかと信じること(が大事)だと思う。みんなが信じないといけない」と声を上げた。

 さらにみのるが会見で名前を挙げて直訴した前田氏は「業界を引っ張ってきた後輩であり仲間。高山には頑張ってほしい。どういう形か分からないけど、何かできることがあれば前田日明としてもリングスとしても協力したい」と約束。関係者によると高田氏も、高山夫人に「なにかあったら言ってね」と声をかけたという。プロレス界に加え、高山の原点であるUWFの魂も支援の輪に加われば、これほど心強いことはない。

 高山自身はこの日「仲間たちが集まって、私のためにいろいろとやってくれると聞き、感謝の気持ちしかありません。みなさん、どうもありがとうございます。私もどんどんアイデアを出していこうと思っております。リハビリ頑張りますので今後ともよろしくお願いします」とコメントを発表した。この日から始まった募金活動に加え、関係者によると来年開催予定だったチャリティー支援大会が年内に早まる可能性もあるという。格闘界が総力を挙げて支援しようとする活動は、帝王が残してきた足跡の大きさを物語っている。

◇処置怠れば「第2の三沢さんになっていた」=高山は試合で回転エビ固めを仕掛けた際に負傷した。本人のコメントにも「手術を受けた後、心臓停止のトラブルもあり(中略)ご報告できる状況にありませんでした」とあり、いかに深刻な事態だったかが分かる。新日プロの医事委員会に名を連ねる牧田総合病院の朝本俊司医師(脳神経外科、脊椎脊髄外科)は「処置を怠っていたら第2の三沢(光晴)さん(2009年の試合中に頸髄離断で死去)になっていたと思います」。試合の映像を見た上で「もっとひどい技もある。全てのスポーツで起こるべくして起きた事故はない。全て偶発的なもの。今回の件でプロレスは危険だという話になってはいけない」と話した。今年は高山以外にも本間朋晃(40)、柴田勝頼(37)らプロレス界で重傷者が相次いでいる。だがこれらの事故は大会数の多さや長時間の試合との因果性はなく、完全に防ぐことは難しいというのが朝本医師の見解だ。「新日本も取り組んでいますが、選手を守っていく上ではメディカルチェックをより徹底していく。今後は団体が強制してもいいかもしれない。そして事故のデータを集めて業界で共有していくことが大事」。団体の大小にかかわらず、医学的なコミッションを設けることも検討するべきとして「日本は海外に比べるとその考えが遅れている」と警鐘を鳴らしていた。

☆たかやま・よしひろ=1966年9月19日生まれ、東京都墨田区出身。UWFインター、1992年6月28日博多大会の金原弘光戦でデビュー。その後はキングダム、フリーを経て99年に全日プロに入団。分裂後はノアに移籍するが、2001年から再びフリーになり、PRIDEにも参戦した。02年にノアのGHCヘビー、03年には新日プロのIWGPヘビーを獲得。04年8月に脳梗塞で2年間欠場するも、復帰後の09年に3冠王者になり、3大主要団体のシングルとタッグをすべて獲得した。196センチ、125キロ。