首の負傷のため無期限欠場中だった女子プロレス界のエース・紫雷イオ(27=スターダム)が8日、復帰戦(13日、東京・後楽園ホール)への思いを明かした。頸椎椎間板ヘルニアを克服してのスピード復帰となったが、リングを離れていた約2か月は「どん底だった」と告白。米WWEに移籍した元スターダムのカイリ・セイン(28=宝城カイリ)の存在も影響があったという。“天空の逸女”に何があったのか――。

 ――首の状態は

 イオ:症状的には複雑ではなく、完治という形で復帰にゴーサインが出ました。箇所が箇所なのでファンの方も「早いんじゃない!?」と心配してくれるけど、全然大丈夫。これ以上止まったらさらに落ち込むので、何とか出させてくださいという思いでした。どん底までいったので、あとは上がるしかないという心境です。

 ――どん底とは

 イオ:過去に人生がうまくいかないと思った時期があって、ここ4年くらい気持ちだけは折れないようにやってきたけど、今回はすごい落ち込んだ。自分でも引くくらい。人と会いたくなくて家から一歩も出られず、食事も半分以下しか食べられなかった。

 ――なぜそこまで

 イオ:私は試合しないとこんなにダメなんだなって、いつリングに帰れるんだろう?って考えては、自分を見失いました。これまではベルトを守るという明確な使命があったけど、守るものもなく、首には負傷…。帰っても居場所がないと思った。

 ――そんな中、6月30日にWWE日本公演(両国国技館)を観戦した

 イオ:毎年行っている。この業界にかかわっているからには、世界一の団体を生で見られる時は見たいので。あくまでお客さんとして行きました。

 ――あの大会でカイリ・セインの入団が発表された

 イオ:こういうタイミングで公に出るのは知らなかった。あれを見た時に「自分はどうしよう?」って。普段はネガティブなことを言わないタイプなんですけど、さすがにちょっと…きましたね。一緒に肩を並べていた人が前に進んでいるのに、自分は明らかに立ち止まっている。後退しているんじゃないかという気持ちになって、さらに落ち込んだのはあります。

 ――そこまで思いつめていたとは

 イオ:メンタルが強い自信はあったけど、私も人間ですから。彼女の足を引っ張りたいとか、うらやましいとかではなく、自分のことを考えたらそうなりました。ただ彼女の活躍は祈りつつですけど、私には日本でやることがあるなということです。まずスターダムに帰らないと何も前に進まない。落ち込んだこともスターダムに戻ることも“天命”なんだなって。

 ――一方でイオ選手も海外移籍の噂が絶えない。正直、挑戦の意欲は残っているのか

 イオ:ありますよ。日本の大きな(会場の)両国国技館や東京ドームにステップアップしていくのか、海外なのか分からないけど、常に進化していきたいので。現状で満足はしてないです。大きな舞台に立てるチャンスがあるなら、現役を続ける限りチャンスを求め続けます。

 ――復帰戦について

 イオ:決まってからこんなに元気になった。魚は水がないと生きていけないけど、紫雷イオはプロレスがないと生きていけない。いつも「いつかは辞めて主婦になります」と言っていましたけど、当分無理ですね(笑い)。水を得た魚ですから、ピョンピョン跳びはねてやろうと思っています。 

★6・21悪夢の岩谷戦=イオは6月21日の後楽園大会で岩谷麻優(24)に敗れ、ワールド・オブ・スターダム王座15度目の防衛に失敗。翌日に首の負傷を抱えていたことを公表し、治療に専念するため無期限の欠場に入った。海外移籍の噂もある中、7月30日新木場大会にサプライズ登場し、スターダムでの復帰を発表した。13日後楽園大会ではバイパー、HZKと組み、6人タッグのアーティスト・オブ・スターダム王座(王者は松本浩代、米山香織、ジャングル叫女組)に挑戦する。一方、WWEに移籍したカイリは、世界中から32人が参加したWWE初の女子トーナメント「メイ・ヤング・クラシック」に出場している。

☆しらい・いお=本名と出身地は非公表。1990年5月8日生まれ。2007年3月4日のMAKEHEN新木場大会でデビューし、12年3月スターダム入団。ワールド王座V14の最多防衛記録を樹立して15、16年度の東京スポーツ新聞社制定プロレス大賞・女子プロレス大賞受賞。156センチ、54キロ。得意技はムーンサルトプレス。