新日本プロレス1日の鹿児島大会「G1クライマックス」Aブロック公式戦で飯伏幸太(35)がIWGPインターコンチネンタル王者・棚橋弘至(40)を撃破し、3勝目を挙げた。フリー転向1年目の昨夏は米WWEの「クルーザー級トーナメント(CWC)」に参戦した飯伏だが、WWEの正式オファーを蹴って世界一過酷なリーグ戦に帰還。その裏には“研究”の末の原点回帰があった。

 地元凱旋大会で「神」と尊敬する棚橋との大一番を迎えた飯伏は、ハイフライフローを剣山で迎撃して反撃開始。シットダウン式ラストライドを決めると、最後は相手の両腕を固定してのヒザ蹴りでついに憧れの棚橋超えを果たし、同技を「カミゴエ」と命名した。

 昨年2月に新日プロとDDTの2団体を退団した飯伏にとって、今夏のG1は2年ぶりの舞台。昨年の今ごろはちょうどCWCに参戦していた。トーナメント中からWWEからは好待遇での契約オファーがあったが、これを断って再び古巣の過酷なリーグ戦に身を投じた理由は何なのか。

 飯伏は「条件はすごくよかったですよ。最高によかった。だから自分が(プロレスを)生活のためにやっているのか、好きでやっているのか、それの実験にもなりましたね。あくまで結果論なんですけど」と明かした。

 G1制覇やIWGPヘビー級王座獲得など、退団当時から飯伏は新日本でやり残したことがあると考えていた。さらには「実際は初めから(契約するつもりは)なかった。米国で暮らせないから」と、自身に海外での生活能力がないことも自覚していた。それでも海を渡ったのは、世界最大団体のプロレスとはいかなるものか? という研究心だ。それは結果として、ダブル所属による疲弊で忘れてしまっていたプロレスへの愛情を思い出すキッカケとなった。

「やっぱりG1は楽しいですよ。日本でできるし、日本にプロレスを広めるために自分も貢献したい」と話す飯伏は、試合後のリングで「こんなにもプロレスを好きになったことはありませんでした」と万感のマイクアピール。大事なものを取り戻し、ついに帰ってきたゴールデンスターが、3度目の夏に大きな花火を打ち上げる。