棚橋V6の原動力は「猪木超え」

2013年01月06日 16時00分

 新日1・4東京ドーム大会のIWGPヘビー級選手権は王者・棚橋弘至(36)がオカダ・カズチカ(25)の挑戦を退け6度目の防衛に成功した。肉親でさえ「世代交代」を覚悟した頂上決戦を制した棚橋を支えたのは、プロレス界を背負う使命感とアントニオ猪木(69)への対抗心だった。

 

 昨年のベストバウトの再現となった頂上決戦。動いたのは30分すぎだ。ドロップキック、ツームストーンパイルドライバーを浴び窮地に陥った棚橋だったが、レインメーカーをスリングブレイドで切り返し形勢逆転。おきて破りのツームストーン弾を決めると、ハイフライフロー2連発で死闘に終止符を打った。2・10広島大会では、カール・アンダーソンとのV7戦が決定的だ。

 

 世代交代の4文字が目の前に迫っていた。2012年度東京スポーツ新聞社制定プロレス大賞(7日授賞式)のMVPとなった新星・オカダの出現で、絶対エース・棚橋の立場は脅かされた。昨年末に岐阜に帰省した際には母・とも子さん(62)に「アンタも小さい体でよく頑張った」と、戦前にもかかわらずなぜか慰められた。「家族でさえ、もうそろそろ交代するという予感があったんでしょうね」(棚橋)。ただならぬ危機感が充満する中での勝利だった。

 

 四面楚歌の逆境に立たされた棚橋を支えたのはあくなき向上心だった。最多戴冠回数、最多連続防衛記録とIWGPのあらゆる記録を塗り替えた棚橋だが、目指す境地ははるか先にある。

 

 それを再認識させられたのは、昨年末に雑誌の企画で実現した猪木との対談だった。「思いを継ぐ人間を育て切れなかった」と語った猪木に対し、棚橋は「オレが猪木さんを超える存在になる。そうすればゴールデンタイムのプロレスを超えるのも夢じゃなくなる」との思いをより強めた。“反猪木派”の急先鋒としても知られる棚橋だが、その偉大さを強烈に意識している表れでもある。

 

 10年5月に東京都内の「高級住宅街」(本人談)にマンションを購入した棚橋は、ローンを組む際に「プロレスができなくなったらどうするのか」と聞かれ「その時はアントニオ猪木のようになります」と答えた。すでに新日プロエースとして確たる地位を築いていた時期だけに、猪木の名前を出さざるを得なかったのは不本意だった。自身の名前はまだ広く世間に浸透していない。真の黄金時代を再び作り上げることが使命だと胸に刻んだ瞬間だった。

 

「いい時代に戻ってきたと言われてますけど、まだまだ。現状に甘んじないのがエースであり王者」。時代は変わらなかった。棚橋の時代が真の輝きを放つのはこれからだ。