新日本プロレスの柴田勝頼(37)が9日の両国国技館大会後に「硬膜下血腫」が見つかり、緊急手術を受けていたことが10日、発表された。同大会でIWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(29)に敗戦後、救急車で都内の病院に搬送されていた。幸いにも術後の経過は良好だというが、予断を許さない状況が続いており、プロレス界に大きな衝撃が走っている。

 柴田はオカダとのIWGP戦で強烈なヘッドバットを繰り出すなど、38分を超える壮絶な打撃戦の末に敗れた。激闘のダメージは色濃く退場の途中で倒れ、控室に戻ることもできず救急車で病院に搬送された。

 搬送先の病院で硬膜下血腫と診断され同日未明から約5時間にも及ぶ手術が行われた。関係者によると手術は無事に成功し、10日現在で術後の意識もしっかりしており会話も可能な状態。試合直後に見られた右半身のまひも回復の傾向にあり、試合の記憶もはっきりしているという。

 急性の硬膜下血腫は頭部外傷でも重傷とされ、これまでのマット界でもたびたび死亡事故が起きた。柴田の場合は早急かつ適切な処置があり、血腫の量も少なかったことから、良好な経過につながっていると見られる。とはいえ、今後についてはかなり慎重な判断が迫られることになる。

 柴田は次期シリーズ(22日、後楽園ホールで開幕)の全休が発表され、団体も術後の経過を見守る方針。新日プロの医事委員会に名を連ねる国際医療福祉大学三田病院の朝本俊司医師(脳神経外科、脊椎脊髄外科)は「医学的エビデンス(根拠)はないんですが、再発しやすいとも言われています。プロレスラーとしての今後となれば、厳密な検討が必要になるでしょう。決して楽観はできない」と話した。

 だがその一方で、エールも続々と届いている。この日、両国大会の一夜明け会見に出席したオカダは、柴田について質問が出るや声を詰まらせながら「柴田さんはバカ真面目な人だと思ってますんで、また何か約束すれば、その約束を守ろうとしてくれると思います。『またやりましょうよ』という約束を今、ここでしますので『しっかり守ってくださいよ』っていうのは伝えたいですね」とメッセージを送った。また柴田とは三重・桑名工業高校時代の同級生で、盟友かつライバル関係にある後藤洋央紀(37)も本紙の取材に対し「回復を祈ってます。柴田といつかIWGP戦を戦うというのは、今でも俺の夢なんです。何よりも柴田の強さを信じています」と胸中を明かした。

 突然、トップレスラーを襲ったアクシデントは業界全体にとっても大きな衝撃。今は柴田の「男の根性」を信じ、ただ復活を祈るしかない。