全日本プロレスの秋山準(46)が16日、異例のパートナーを抜てきした真意を明かした。世界タッグ選手権(20日、兵庫・神戸サンボーホール)では、流出中のベルト奪還をかけて、大日本プロレスの“破壊王2世”橋本大地(24)とコンビを結成する。あえて敵軍の若手選手をパートナーに選んだ裏には、約15年前に大地の父である故橋本真也さん(享年40)から受けた恩義があった。

 20日の神戸大会で秋山組は、世界タッグ王者の関本大介(35)、岡林裕二(33=ともに大日本)組に挑む。しかも多くの修羅場をくぐり抜けてきた大森隆男(46)ではなく、今年になって3回組んだだけの大地をパートナーに選んだ。その理由について秋山は「橋本さんからいろいろなものを手に入れたからね。橋本さんがわざとやったわけじゃないけど、俺はやってもらったと思ってる。だから恩返しとして何かできることがあれば、と考えた結果だよ」と意外な言葉で説明した。

 橋本さん率いるゼロワン旗揚げ戦となった2001年3月2日の両国国技館大会、当時ノア所属だった31歳の秋山は、故三沢光晴さん(享年46)と組んで橋本さん、永田裕志組と対戦した。ただ一度だけ破壊王と向かい合った試合は、レスラー人生の大きな転機になったという。

「若手なんか木っ端みじんに潰すイメージがあったけど、あの人はそうじゃなかった。若い俺と永田選手を引っ張り上げてくれた。そのときは分からなかったけど、年を取ってから『あの人はすごい』と思ったんだ」

 その恩義があるからこそ、伸び悩んでいる大地に殻を破るキッカケを与えたかったのだ。さらにはもう一つ理由がある。おとなしい全日プロ所属の若手勢に、危機感を持たせることだ。

「誰でもいいから『社長が他団体に取られたベルトを取り返すのに、他団体の人と組んでどうするんですか!』って言えば、波風が立ってくるんだよ。俺なら言ってる」

 しかし情けないことに何の反応もないのが現状だ。秋山は「やるからには取る。所属と他団体が組んでいるんだから、大地と取り返したら(団体としては)一番中途半端だろ!? どういう反応があるのか楽しみだな」と意味深な笑みを浮かべた。

 恩義と怒り。相反する2つの思いを背負い、策士は本気でベルトを奪いにかかる。