ノアの丸藤正道(36)とGHCタッグ王座を保持する新日本プロレスの盗っ人・矢野通(38)が30日、早々と逃亡宣言を繰り出した。6月12日の後楽園大会で前王者の「KES」ランス・アーチャー(39)、デイビーボーイ・スミスjr.(29)組との初防衛戦が決まったが、矢野は終始「怖い」と弱音を連発して抗争回避を予告。ついには王者チームの“特権”まで自ら放棄してしまった。

 矢野組は28日の大阪大会でKESを撃破しベルト奪取。前王者組の再戦要求により、後楽園大会でのV1戦が決まった。

「大阪には来れなかったお客さんにも、僕たちが勝つ姿を見せたい。次に負けてしまったら何の意味もない」と腕をぶす丸藤を横目に見ながら、矢野の態度はあまりに消極的だった。

「またすか?(日程が)近くないっすか? どうしよう…。怖いです」と何の恥じらいもなくKESへの恐怖心を吐露。ただ単に巨漢外国人コンビが怖いという理由で試合をしたくないとは、キャリア14年のプロレスラーの発言とは思えない…。

 最近のプロレス界では王座戦のダイレクトリマッチは決して珍しくない。今回の王座戦も前王者・KESのリマッチ権が優先されたものと見られる。裏を返せば仮に矢野組が後楽園決戦で敗れても、再々戦を主張する権利が発生する。

 しかし矢野は「私はこんな怖い思いは、金輪際したくない。そんな制度はゴメンだね。放棄…というかこのシステム、もうなしにしよう。逃げます、ハイ」とキッパリ。ここまで来るとすがすがしいまでの逃げ腰ながら、結果的には自ら退路を断った格好だ。

「(リマッチ権は)王者としては当然の権利かもしれない。ただ私の場合はKESはもう嫌なんで。これが最後です。あと大会(スケジュール)に追われて防衛戦を組まれるのも嫌。今後は気まぐれで防衛戦をやりたい」と言い放った。

 確かにこのシステムがある限り、王座戦線はリマッチの無限ループに陥る危険性が存在する。情けない理由に目をつぶれば、今回の一戦を完全決着戦に指定した心意気という曲解も可能だ。どうせ逃げるなら、矢野は華麗な勝ち逃げを狙う。