31日のノア横浜文化体育館大会で行われたGHCヘビー級選手権は挑戦者の杉浦貴(45)が王者の丸藤正道(36)を撃破し、第25代王者に輝いた。14度の歴代最多防衛記録を保持しながら、約4年7か月もベルトに縁がなかった男を再び最前線に駆り立てたのは、昨年末に雄姿を見せた2人の“レジェンド”の存在だった。

 鈴木軍入りしてから極悪ファイトに徹していた杉浦だったが、序盤は封印。“制裁マッチ”を予告していた王者との真っ向勝負に挑んだ。だが25分過ぎに不知火・改を決められて大ピンチを迎えると、これを鈴木軍が総出で救出する。杉浦は4発目の虎王を黒いパイプイスで迎撃すると、最後は意識もうろうとする丸藤に五輪予選スラム一閃。2011年7月10日に失って以来の王座返り咲きを果たした。

 試合後はノーコメントながらも、杉浦は一連の前哨戦でミミズ腫れした胸に鮮血をにじませながらベルトを誇示した。

 現在のプロレス界では一、二を争う練習量を誇る杉浦にとって、今回の奪還劇は鍛錬のたまものだった。

 影響を受けたのは“世界のTK”こと高阪剛(45)の存在だ。02年6月のPRIDE21(対ダニエル・グレイシー戦)で総合格闘技に初挑戦する際から練習を見てもらうようになり、10年以上も高阪のジムに通い続けた。

「言葉ではなく態度で示す人だった」。衝撃を受けたのが06年5月、マーク・ハント戦を控えた高阪のスパーリング相手を務めた時だ。結果的にこの一戦で高阪は現役引退を決意したのだが、鬼気迫る表情に「生半可な気持ちでは壊される」と感じ、練習に対する姿勢を改めた。

 杉浦は同時期に“IQレスラー”桜庭和志(46)の元にも出稽古に向かっている。くしくも2人は昨年末の格闘技イベント「RIZIN」(さいたまスーパーアリーナ)に出場。「あの年齢で出ることに驚いた。すごい。負けていられない」。1学年上の2人が新たな挑戦を続ける姿に刺激を受け「年齢で区切るのではなく、体が動く限りは戦い続ける」という決意を固めたという。

 2人のレジェンドに背中を押された杉浦。5月に46歳になる男は、ベルトを胸にあくなき戦いを続ける。