最後の新技だ。ミスタープロレス・天龍源一郎(65)の引退試合はいよいよ15日、東京・両国国技館でゴングが鳴らされる。相手は新日本プロレスのIWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(28)。ラストマッチに最強の相手を選んだ天龍は、究極の最終兵器を用意していることが13日までに分かった。その名も「53歳改め65歳9か月」。ジャックハマー式の強烈な変型脳天砕きで、レインメーカーの頭部を一撃で破壊するという。

 決戦まであと2日。天龍は完全な戦闘モードに突入していた。7日に東京・品川で行われたスタン・ハンセン氏(66)とのサイン会を最後に、あらゆるタレント活動をいったん中断。ラストマッチに向けてリング上での最終調整に入った。公開練習も本人の意思により行われず、最後の大一番に向けてすべての雑念を振り払った格好だ。


 39年前に米テキサス州アマリロでデビュー戦を行った13日、本紙は横浜市内で調整中の天龍をキャッチしたが「……」。鬼のような形相で無言を貫く。その後は、練習場のドアを完全シャットアウト。約2時間半、みっちりと汗を流した後はひと言も発しないまま、背中に殺気を漂わせ練習場を後にした。


 それでも最後の最後までサプライズが用意してあった。天龍はオカダ戦用に新技を開発していたのだ。変型ジャックハマー「53歳」の改良版で「高く持ち上げることよりも、スピードと落ちる角度に重点を置いた技」(天龍)だという。正式名称は「53歳改め65歳9か月」。引退試合仕様の最終兵器だ。


 オリジナルの「53歳」は相手の頭を左脇に抱えながらブレーンバスターの体勢で垂直に持ち上げ、落下時にはジャックハマーのように自分の体を浴びせながら頭から落とす。初公開は2003年2月15日、佐賀・諸富町大会の平井伸和戦。当時の年齢にちなんで命名された。天龍は開発の理由を「あまりにヒマだったから」と語っているが、実際はWJ旗揚げ戦(同年3月1日、横浜アリーナ)での長州力戦に向けてのものだった。


 最後に放ったのは引退ロード第8戦(4月30日、東京・新木場)の拳剛とのシングル戦。拳剛はこの一撃で首を痛め、現在も長期欠場を続けている。よく考えるとヒドい話だ…。


「滞空時間の長いブレーンバスターは、受け身を取る時に痛みが分散するんだ。今回狙う技はタメを作らず、高速度で相手の頭をマットに叩きつける。痛みが頭一点に集中するわけだね。この一発でオカダの身長は10センチ縮んで、かわうそ(外道)と同じ背丈になるだろうよ、フフフ…」と天龍は決戦モード突入前に新技を示唆していた。ちなみにオカダ191センチ、外道172センチ。天龍の言葉通りなら、オカダは19センチも身長が縮むことになる。


「俺は自分が満足すればいいと思っていた。でもチケットが完売したと聞いて、少し考えが変わった。来てくれたお客さん全員に満足してもらおうと。(新技は)試合を受けてくれたオカダに対する敬意でもある。まあアイツは路傍の石でいいんだけどな」


 この発言の際「今は討ち入り前の大石内蔵助の心境」と不敵に笑っていた天龍だが、今はマットの上で一人、何を思うのか。いよいよ世紀の大一番のゴングが鳴る。