新日本プロレス27日の神戸ワールド記念ホール大会で行われたIWGPインターコンチネンタル選手権は、挑戦者の中邑真輔(35)が後藤洋央紀(36)を撃破し、第12代王者となった。王座戦連敗からG1クライマックスでの満身創痍の戦いにより、深刻な燃え尽き症候群に陥りながらも完全復活。同王座5度目の戴冠を果たした中邑が、新たな時代を築き上げる。

 今年だけで4度目となる同期対決は、一進一退の攻防が続く。試合が動いたのは20分過ぎ。飛びつき腕ひしぎ十字固めに出た中邑は、逆に腕十字で切り返され昇龍結界(変型腕固め)への移行を狙われる。

 それでも何とかこれを逃れると、グラウンドの王者に突き刺し式のボマイェを発射。なおも正調ボマイェをキャッチする粘りを見せた後藤を強烈なジャンピングニーでなぎ倒すと、ついにボマイェを突き刺して激闘に終止符を打った。

 IC絶対王者・中邑の返り咲き。しかし道のりは険しかった。7月の大阪大会では奪還に失敗。さらに準優勝に終わったG1クライマックスでは左ヒジ負傷で一時は欠場に追い込まれ満身創痍の戦いを強いられた。「G1で己の限界を超える戦いをして、(直後の米国ROH遠征で)夏休みも短かったこともあって、何をしても『心ここにあらず状態』だった」

 王座挑戦が決まり、今シリーズに突入しても深刻な燃え尽き症候群が続いた。移動日だった21日には愛媛・松山でロッキー・ロメロとの夕食後、帰路で多額の現金が入った財布を紛失するダメ人間っぷり…。しかしこれが偶然にもファンに拾われ、中邑は翌朝警察からの電話によって起こされた。

「心優しき『アンドウさん』という青年ですよ。ハハハ。『お礼はいいからサインが欲しい』と言っていただいた。世の中すさんだニュースばかりで、自分もネガティブな時期に、心が洗われた気分でしたね」と振り返る中邑は、お礼の1割とプロレスグッズを送付。トラブルの中で、改めてファンのありがたみを知ったことが、完全復活の後押しになったという。

 実に5度目の王座戴冠となった中邑には、さっそくカール・アンダーソンが次期挑戦を表明して11月7日大阪大会でのV1戦が決定的となった。「まだまだやることあるのか? あるからこそ、このベルト、命を吸いに(自分のもとに)帰って来たんでしょう」と豪語。財布とベルトのみならず、絶対王者の姿も帰って来た。