【過去の引退試合】引退→復帰が通例となってしまった現在のマット界で、重みのある引退試合は数えるほど。1998年4月4日の東京ドーム大会で、新記録となる7万人の大観衆を集めて引退試合を行ったアントニオ猪木は、挑戦者決定トーナメントを制したドン・フライに勝利。99年1月31日に亡くなったジャイアント馬場さんの“引退試合”は、同年5月2日の東京ドーム大会のリング上に16文のシューズが置かれ、セレモニー形式で行われている。

 完璧な引退試合として記憶に残るのは、鉄人・小橋建太のラストマッチ。一昨年の8人タッグ戦で奇跡のムーンサルトによる最後の勝利を飾り、1万7000人の大観衆を感動の渦に巻き込んだ。

 格闘技界では、格闘王・前田日明が99年2月21日に横浜アリーナで、当時“霊長類最強”と呼ばれたレスリング王者のアレクサンダー・カレリン(ロシア)と引退試合を行っている。1ロストポイント差の判定負けを喫したが、カレリンとの対戦を実現させた功績は大きい。プロレスの引退試合はいずれも勝敗を度外視した記念試合的な意味合いが強く、天龍とオカダのように遺恨を清算すべく一騎打ちに臨んだ前例はない。