ミスタープロレス・天龍源一郎(65)は引退試合(11月15日、両国国技館)の対戦相手について最後まで「まだ数人の候補が挙がっている段階だから」と慎重な姿勢を崩さなかった。表現方法は多少乱暴かもしれないが、オカダ・カズチカ(27=新日本プロレス・IWGPヘビー級王者)戦への“情熱”は本物だった。言葉の端々から真剣さが伝わってきた。相手は新日プロの看板選手で現IWGPヘビー級王者だ。普通なら実現は難しいだろう。

 しかし、今回はミスタープロレスのラストマッチ。二度三度あることではない。関係者の英断を望みたい。

 本気でトップ選手との戦いを熱望する天龍はこう続けた。「じゃあアンタはトップなのかと問われれば、俺は過去の業績をさらけ出すしかない。その業績全部をかっさらってみろと。俺にはそれしかないんだ」。その言葉は魂からの叫びのようでもあった。「今日を生きるしかないんだ!」との思いから天龍革命をスタートさせた若き日の天龍の姿が、重なって見えた。

 インタビューの最後には「阿修羅原と始めたレボリューションを背負うつもりでリングに上がるよ」という言葉も飛び出した。驚いた。盟友の原さん(4月28日死去、享年68)が亡くなってから、公に「阿修羅原」の名前を口にすることは一度もなかったからだ。初めてですね、と問うと天龍はああそうだね、とだけ答えた。言葉が出ない。わずかな沈黙が、腹の底にズシンと響いた。