本紙昨報通り、ノアは21日、元GHCヘビー級王者・森嶋猛(36)の現役引退を正式発表した。引退理由は糖尿病により血液中のヘモグロビンHbA1c数値が異常に高いことによるドクターストップとされている。ノアでは森嶋自身の意思を尊重して円満に送り出す方針。しかし18年来の付き合いになる丸藤正道副社長(35)は異例の「慰留交渉」を続けていることを明かしており、電撃退団の余波はまだ続きそうだ。

 ノアはこの日、マスコミ各社に向けたリリースで森嶋の引退を発表。主力選手の電撃引退が公となり、東京・有明のノア事務所も終日、対応に追われた。田上明社長(53)は「しょうがない。ただ10代から付け人を務めてくれた選手だし、寂しい面はある。本人の意思を尊重して、快く送り出したい」と沈痛の表情を見せた。

 引退試合は行わない方針で、ノアでは何かしらの形でファンにあいさつする場を設ける予定だという。森嶋と同じ取締役の杉浦貴(44)は「残念。ここ何試合かは何か吹っ切れたかのようにマイクアピールとかやっていたので、今考えると、それ(引退決意)で吹っ切れていたのかもしれない…」と声を落とした。団体幹部は16日に森嶋から引退報告を受けていたものの、急転直下の展開に誰もが困惑の様子を隠せなかった。

 その一方、丸藤副社長だけは異なる見解を示している。「まだ彼がしっかりした気持ちで話してない。周りの人間がとやかく言うことじゃないし、追い詰められたら、彼も本当の気持ちを言えないと思うし」と前置きしながら、思いの丈を口にした。

「(引退報告に)『はい、そうですか』とは言えない。今の状態の森嶋猛でプロレスが無理というなら仕方ないよ。でも、まだ40歳手前。諦めてほしくない」。会社として正式発表した現在でも、丸藤にはそのまま現実として受け入れられない。現在はモチベーションが下がっている状態と見ており、時間の経過を待てば、体と気持ちが整う日が来ると確信している。その思いから個人的な“説得”を続けているというのだ。

「少しでも最善の道を彼に作りたい。仲間だしね。ひとまず体も心も休めて考えてほしい、という思いは伝えている」と丸藤。元GHC王者のあまりに突然過ぎた引退発表。ノア内部も大きく揺れている。